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最期にできること

 息をするたびに命が削られていきそうな、痛みが走る。もう、長くはないのだろう、と勝手に悟る。

 これまで、そんなに死を意識して生きてきたわけではない。まだまだ先であろうし、なんなら今でも構わない。そんなつもりで生きてきた。けれど、いざこんな状態になると、何も思わないわけではないらしい。

 生きたい、とか、死にたくない、とか、ではない。

 ひとり この部屋で最期を迎える。

 まさしく、最期だ。何をしたらいいのだろう、何ができるであろう。

 そんなことを考えていたこともあったけれど、ただ、ただ、こうして、息をするだけで精一杯。まだ、生きている、ということだけで、精一杯。私が最期にできることはただ、息をする、死までを生きる、それだけのことだったのだ。

 当たり前にできていたことが、何も考えずに自然にできていたことが、こんなにもつらい。

 命が削られていく。少しずつ、少しずつ。それだけがわかる。それを実感しながら、息を吸う、息を吐く。少しずつ、少しずつ。

 あぁ、このまま眠りについたら、呼吸もできず、そのままあの世に連れて行かれるであろう。それもいい。それが叶うなら。それでも、体が無意識に苦しくて、目覚めてしまうかもしれない。

 こんな、ことだったのか。

 死を目前にして思う。自分との対話を感じる。

 あぁ、こんな、ことだったのだ。

 それがいいか悪いかなんてわからないーーそんなことも言っていられない。いられないほど、命を、命というものを実感させられる。

 息をする。息をする……。

 私はまだ、生きている、らしい。

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。