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七澄シロ
2021年6月30日 07:51
広くなった部屋を見渡す。そうだ、越してきた日もこんな部屋だった。カーテンのない窓から風が吹き込んで、フローリングの上に転がったまま雲が渡っていくのを眺めていた。始まりと終わりは似て非なる。電気を消して壁をひと撫で、ドアを開けて呟く。「行ってきます」もう帰らない部屋へ感謝を込めて。
2021年3月7日 00:31
歩道橋の上からは世界が見渡せた。いつもの公園と団栗の森、時計台に図書館にあの子の家の赤い屋根。それが僕の世界の全てで、大人になればもっと色んなものが見えると信じていた。歳を重ねる程見えなくなるものもあるなんて知らずに。歩道橋に上るたび想う。錆ついた手摺はまだ、そこにあるだろうか。