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思想書としての進撃の巨人。

妻が「進撃の巨人」を大好きなのと、漫画好きのボクとしてもたまには漫画作品をネタにして書いてみるのも良いかな?と思ったので、取り上げてみました。

まぁ「釣り」のつもりは毛頭ないのですが、タイトルほど大した内容ではないのであしからず…。

なお、当記事は「進撃の巨人」の内容に関する考察やネタバレ等はございません!

知るほど深い「進撃の巨人」

さて、同作品は、読者(視聴者)に戦争や平和、正義といったモノに関する1つの哲学的あるいは政治的な考え方のヒントやらきっかけを提示する、いわゆる思想書(啓蒙書か?)としての「問題集」のような役割も備えている作品だと思います。

もちろん、そういった位置付けになる作品はきっとこれまでも沢山あっただろうし、人によってその対象作品も変わるでしょう。

例えば、これまでのボクにとって思想的な意味で最も影響を受けた作品は、銀河英雄伝説です。

いきなり別の作品の話からで恐縮ですが、銀河英雄伝説は、10代の頃のボクにとって思想的な意味で考え方に大きな影響を与えました。

例えば、民主主義とは何か、君主制と民主制の違いやそれぞれの功罪、戦争の愚かさと共に平和の構築の難しさ、正義の反対は必ずしも悪ではなく別の正義が存在しうる事など、また階級文化による差別や嫉妬の醜さ、自由とは何か、人の傲慢さと脆さ、などなど多岐に渡りますが、人間社会の構成上避けて通れない様々な哲学的な問いに対して、多くの回答を提示してくれたモノだと思っています。

そして本題の進撃の巨人という作品ですが、突如として奪われる自由、そこにある理不尽な暴力、未知への恐怖や無知がもたらす罪、戦争や平和、同時並行的に存在しながら視点によって見え方が変わる正義、などなど、やはり色々と考えさせられるポイントが多々あります。

銀河英雄伝説に比べて回答については読者・視聴者に委ねる部分が多いですが、問題提示という意味では進撃の巨人も多くの事をテーブルに挙げる作品だと思います。

進撃の巨人を仮に思想書の「問題集」とするならば、銀河英雄伝説はその「回答集」にもなるかも知れません。

ただ、進撃の巨人は作品の序盤というか中盤までは、それらがテーマとしては見えにくい程に、ファンタジー的な側面の完成度が高い(ひたすら舞台設定としての謎が解けないままにその答えの追求が当面のテーマとして機能している)ので、そこまで真面目な(あるいは重い)テーマが内包された事を知らないままに読み進められのも、進撃の巨人の面白いところと考えます。

また、思想的な考察ポイントが多いからこそ、作品全体への個人的な感想を短くまとめるのは難しくもあります。

でもでも、そんな中で考察や感想を抜きに挙げられる印象的な点として、アニメから次のシーンを挙げたいと思います。

"「敵と味方」
巨人を相手にしていた頃は、巨人が敵だった。
国を相手にしていた頃は、国が敵だった。
それぞれが信念を押し通す限り、敵は消えない。"

実をいうとこれは原作をはじめ物語の本編内に出てくる言葉やセリフではなく、アニメ版86話の途中で挟まれたカットインに描かれた「敵と味方」という補足情報というか説明文です。

楽しめるポイントや泣けるポイント、感動ポイントや興奮ポイントは枚挙にいとまがないので、あえてシーンの合間に挟まれたカットインパネルから選びましたが、この一文を見て、視野狭窄的とまでは言わないまでも争いが起こる時の人の盲目さというか、本質的な問題点を俯瞰的かつ端的に表した分かりやすい文章だと思いました。

また、平和を考える時には脇に置いておきたい、主義や主張を述べる前に共有しておくべきポイントじゃないかなと、地味ながら個人的に思ったので、とても印象に残りました。

ちなみに、10代の頃に出会い現在のボクに影響を与えた銀河英雄伝説の作中で、メインキャラクターの1人であるヤン・ウェンリーが次のような言葉を残しています。

"信念のために人を殺すのは、金銭のために人を殺すより下等なことである。なぜなら、金銭は万人に共通の価値を有するが、信念の価値は当人にしか通用しないからである"

もちろん、金銭のために命を奪う行為の方が尊いとか、価値があるとか肯定する意味ではなくて、戦争や命を奪う行為そのものへの皮肉を多分に含みつつ、自分が正義だと信じるモノの本質的な価値の不安定さ、1つの価値観を押し付ける行為の危うさを痛烈に批判した言葉として、当時のボクの心に突き刺さり、ずっと覚えています。

銀河英雄伝説は他にも格言の宝庫なので、ボクをはじめおそらく多くの人にとって、ただの大好きな小説・アニメ作品の1つに留まらず、思想書としても深く心に刻まれた作品ではないかと思っています。

そして今回の、進撃の巨人も、また。

作中の舞台設定や世界観は全く別物の異なる物語ですが、進撃の巨人もまた、読者や視聴者にとって思想書的な役割というか考えるきっかけ与え得る作品ではないかな?と思います。

特に、今なお戦争が起きている地域もある世界情勢にあって、己の信念や正義を「押し通す」ことや「貫く」ことに伴う別の側面について考える為に、殺したり略奪したりと暴力以外での解決方法がないのか、世界中の人々が自分事として考える為にも、進撃の巨人は是非一度観て頂きたい作品だと思います。


・・・なんてね。

なんとなく真面目っぽく書いてみました。

冒頭でも書いたように、素晴らしい作品は他にも沢山あるし人によってツボも変わると思いますが、またボクの中での「思想書的な意味合い」としては、年齢的な事もあるし銀河英雄伝説の方が影響は大きいのですが、戦争や平和、特に正義というものに対する考え方として、作品の世界観的には「より漫画的で入りやすい」上に、その描き方というか切り口の角度が、物凄くリアリティーがあって直感的に心に訴えてくるので、単純に比較するよなものでもなく、ボクの中でも大きなインパクトを持った作品でした。

進撃の巨人。
問題の提示という意味での思想書として影響が大きいのは中盤以降の展開になるので、なんなら前半は大まかなあらすじ程度に割愛してでも良いので、是非、日本中・世界中の人々に読んで頂きたい作品です。
※たぶん最後まで行ったら改めて前半からの流れ、前半の心情描写や伏線も読み返したくなると思います。


・・・と、漫画好きのボクが進撃の巨人を特別視した形で取り上げる事で、妻からの心象も少しアップさせる作戦の投稿でした。

かしこ。

過去のボクは昭和の固定観念や慣習に縛られ、自分や家族を苦しめていた事に気付きました。今は、同じ想いや苦しみを感じる人が少しでも減るように、拙い言葉ではありますが微力ながら、経験を通じた想いを社会に伝えていけたらと思っていますので、応援して頂けましたら嬉しいです。