安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

フォトジャーナリスト。東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。J-WAVE「JAM THE WORLD」水曜日ニューススーパーバイザー。TBS「サンデーモーニング」コメンテーター。
固定されたノート

国籍と遺書、兄への手紙

なぜだろう。30代になってからふと、亡くなった家族のことを思い出すことが増えたように思う。もしかするとそれは、当時の兄の年齢を、私が追い越してしまったからかもしれない。

 兄が亡くなったのは、中学卒業を間近に控えた春だった。「前を向いて歩きなよ。過去は変わらないんだから」。当時の友人たちが、私にそんな言葉をかけてくれたのを覚えている。落ち込んでいる私を、何とか励まそうという精いっぱいの言葉だった

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「お別れ」と向き合う、グリーフ(悲嘆)を抱いて

中学生の頃だった。父と兄が旅立ってから、ふとした瞬間に記憶がよみがえってきたり、学校の授業中に突然涙が溢れたりすることがあった。誰かを亡くす悲しみは、不規則に押し寄せる波のようだと知った。

「こんなこと相談したら、”私かわいそうって思われたいの?”なんていう目で見られそう」と恐かった。何年もして、ふとした瞬間に悲しみがわき上がってきたとき、「何年も立ち直れないなんておかしいんじゃないか」と、それ

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沖縄慰霊の日、「ちむぐりさ」という言葉

一昨日から、沖縄にお邪魔している。

取材でお世話になっている方々と話しながら、昨年米軍ヘリの墜落、部品の落下が続いたとき、「それで何人死んだんだ」と国会で心ない言葉が投げられてしまったことを思い出していた。

誰かが亡くなられてからでは遅すぎる。沖縄と、東京。断絶しているのは意図的に作られた壁なのか、それとも無関心という溝なのだろうか。ここに来る度に、改めて思う。

そして今日、沖縄慰霊の日。

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「お前もこうなれる」ジダン選手に憧れた難民の少年

今日、6月20日、世界難民の日だ。この日にぜひ、観てほしいショートフィルムがある。私がこれまで観た中で、最も心に刻まれた映画の一つ、「Bawka」(パパ)。15分ほどの短い映像ではあるものの、初めて観たときの衝撃は忘れない。

この映画は2015年に日本で開かれた、ショートショート・フィルムフェスティバル&アジアでも上映されている。

描かれているのはクルド人と思われる親子二人が、安全を求めてヨー

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難民となる人々が、”客観的な証拠”を集められるか

6月20日、この日が「世界難民の日」であることをご存知でしょうか。「難民問題」と聞くと、遠い国の、大変そうな問題、というぼんやりとした輪郭のイメージを持たれるかもしれません。けれども迫害や紛争を逃れた人々は、私たちのすぐ隣にも暮らしています。

先日法務省から発表された、昨年2018年の難民認定者数は42人でした。前年より増えてはいるものの、その人数はいまだ十分とはいえません。またJAR(難民支援

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