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桜とうどんの相乗効果

 皆さん、お久しぶりです。雉を世話していたせいで、記事を書くのをおろそかにしていました。山にいるとホントに時を忘れて、トキが核戦争でとっくに絶滅していた事なんて忘れてしまいそうになります。気づいたらもう桜は散って、ギリギリ花が残っている木ももう葉桜です。一体どうしてこんなに時が経つのが早いのでしょうか。やっぱり時間が経つのを早く感じるのは年齢を重ねたからなのでしょうか。全く年は取りたくないですねえ。

 しかしまぁ、だけど花見はやったんですよ。去年はすっぽかしてしまったんで、今年はなんとか無理矢理槍をねじ込ませるように実行したんです。儚く美しい桜を見ていると本当に美と人生は儚いものだと思い知らされました。私は散りゆく桜を見てリリアン・ギッシュをふと思い出し、そして同じように儚いあの天かす生姜醤油全部入りうどんの味を思い出したのです。

 桜とうどん。人にとってはかなり突飛な、文学好きな人ならミシンとかさの衝突ぐらい意外な連想だと思われるでしょうが、私にとっては桜もうどんも同じようなものです。なぜならこの二つのものは共に儚いものだからです。桜は一瞬のうちに咲いて散ります。うどんも同じように口の中にうまみを広げて一瞬のうちに消えてゆくものだからです。私はたまらずリュックから携帯用に天かす生姜醤油全部入りうどんセットを出してうどんを調理しました。こんな事都会じゃできませんが、ウチは雉しかいないド田舎なので全然平気です。桜の中でうどんを食べるなんて坂口安吾に書かせてみたい見事なシュチュエーションですが、残念ながら安吾の小説にはそんな話はありません。

 さて、文学的な連想はここまでにして、本日も早速美味しいうどんの作り方をお教えします。こうして記事を読んで雉を愛でているより実際にうどんを作って食べた方がずっと良いでしょう。人生は書物には当然ありません。あなたが体験した経験、その記憶が人生というものなのです。うどんを作って食べた経験は絶対にあなたの人生を豊かにします。というわけで前置きはこの辺にしてうどんの作り方のレクチャーを始めます。

 まず、はなまるうどんでかけうどんを受け取ったらそのまま薬味コーナーに行ってください。そこには人生を豊かにするうどんを作る三種の神器である天かす、生姜、醤油があります。それらからまずは天かすを仙人が住むという泰山のように山盛りにかけてください。次は琥珀のような生姜を大さじ一杯かけてください。最後に醤油です。醤油は五回転する黒龍のように五回まわしでかけて下さい。なぜ五回まわしかというとご縁があるようにというこおまじないだそうです。こうするとうどんがさらにおいしくなるばかりでなく、なんとジャンボ宝くじやロト6が300円当たる確率があがるのです。私は最近ジャンボの宝くじで300円当てましたが、きっとこれはきっちり醤油を五回まわしでかけていたからでしょう。

 さて、こうして出来上がったうどんですが、もう何度も口が酸っぱさを乗り越えて塩辛くなるまで言っているのですが、これがあり得ないほど上手い。うどんに絡んだ天かすはまるで天女の肢体のようだし、生姜は神々しくお肌をツルツルにしてゆくし、醤油は五回まわしで登ってゆく龍のように勇ましく我々を奮い立たせてくれます。これがかけうどんの最高級品、フカヒレさえこれに比べたらただのゴムにしか思えないと言われる、天かす生姜醤油全部入りうどんです。しかしこの天かす生姜醤油全部入りうどんとはどうしてこんなに美味しいのでしょうか。いや、どうしてなんて問いかける必要なんてないですね。天かす生姜醤油全部入りうどんとは理屈抜きに美味しいものなのですから。ああ!桜とうどんどちらも美しく、美味しいものだから儚くて美しいもの。正直私もあと何年生きていられるかわかりませんが、生きている限り桜とうどんは愛でていきたいものです。

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