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月にエクスタシー

月あかり、孤独が喜びそうな月の温かみ
一輪の花が、だまされて咲きだすような気がする

まだ岩手に居た子どもの頃
なぜあんな時間
あんなところを通ったのか覚えていないが
雪で覆いつくされた林の道を
雪道に残された足跡で遊びながら帰っていた…
近道をしようと田んぼの方へ林を抜けた
目の前は突然冷たく静かに
それでも皓皓と輝くまんまるな月の光に
周りの全てが蒼白く浮かび上がり
まるで音のしない世界に
わけもわからない恐怖と淋しさが襲った…
でもそれ以上にその風景は美しく
とてつもなく美しく…
ドクドクと血流がかけめぐり
身体と脳の中で何かが弾け飛んだ…

気づいた時は
頬の涙が少し凍り始めていた…

あの時…子どものわたしは何を感じたのか…
身体中を襲ったあの感覚はなんだったのか…
もしも今宵のこの満月に
梯子をかけてひたと耳を押しあてることができるなら
月はそのことをこっそりと教えてくれるだろうか…

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