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男と女、その2=映画監督と主演女優

その1は、コチラへ

https://note.com/nazonou4/n/n7146436ec7e1

そして、過去のアーカイブスの投稿記事より

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid0Yd2dxVAcjjtuk3UtLMXnzjaBrp4Kxs5Wh4rrwygyhTFLtR2EmUbrNE566PxPPay2l&id=100000591726100

お気に入りの名画をもう一度、誰にでも快適で安心な環境で、ゆったりとした雰囲気の中でじっくりと味わえる映画館があります。

山手線田端駅から徒歩約7分の、日本で唯一と言っていい、本格的なユニバーサル・ムービー・ミニシアター「チュプキ」。

今週の月曜日には、『カサブランカ』と『シェーン』を観てきました。

ここは、日本映画でも字幕付き、音声ガイド付きなので、見えない方や聞こえない方で、また、お子さま連れでも他人に気兼ねなく映画が鑑賞できる専用ブースを備えた、20席ほどのミニシアターでありながら、映画を心行くまで楽しめる、本格的な施設です。

この日の最初に観た『カサブランカ』の音声ガイドはとてもわかりやすく、初見でもストーリーがよくわかりました。

まさに恋愛ものの決め台詞のオンパレードでしたが、

しかし、ボギーが自身の口説き文句「君の瞳に乾杯“Here’s looking at you, kid.”(君を見ていることに対して乾杯、の意訳)」を、イングリッドに対して都合4回も連発するとは思いませんでしたね(笑)。

もちろん、それぞれの台詞は場面によってニュアンスが異なりましたが…。

そして、登場人物の名前が、「ルノー」(食わせ者のフランス人警官役)や「フェラーリ」(怪しげなイタリア系アラブ人移民の経営者役)など、いかにもそのお国柄の雰囲気を醸し出す代表的な自動車メーカーでしたが、

実は、この映画は恋愛ドラマの要素を盛り込みながらも、第二次世界大戦真っ最中の1942年に公開されて(前年の1941年12月8日の日本の真珠湾攻撃の日に製作が決まったそうです)、アメリカ合衆国が日独伊三国の枢軸国に対する連合国側への参戦を決めた直後の“戦意高揚国策プロパガンダ映画”であったことを初めて知りました。

この映画では、ヒロインのイングリッド・バーグマンが飛びっきりの美人として描かれ、それを監督が撮りたいがために、この国策映画の監督を引き受けたのかもしれませんね。


そして、次の『シェーン』も、ヒロインのジーン・アーサーのために、他の農夫の婦人たちを極力芋っぽく撮して、彼女だけに輝くシルクのウェディングドレスを着飾らせて、農場の広場で開催された独立記念日のダンスパーティーで、シェーンを演じた、それまではどちらかといえば、B級西部劇の二枚目スタアだったアラン・ラッドとダンスに興ずるシーンがあるのですが、

元々都会のキャリアウーマン役が多かったジーン(『スミス都会へ行く』の秘書役で有名)を、演技派女優としての最後の映画出演の舞台に引っ張り出したかった職業監督ジョージ・スティーヴンスとしては、最大限のもてなしをしたようですね。

南北戦争の傷痕が未だ生々しい南部寄りの西部地区ワイオミングに、馬一頭に単身跨がりやって来た流れ者のガンマン(日本の時代劇の無宿渡世人に相当)シェーンが、旅烏稼業を捨てようとして、山岳地帯の麓に広がる荒れ地だらけの開拓農場の仕事を手伝ったのも、

そして、元々は、この土地を開拓した(実際は現地に住んでいたアメリカ・インディアンを武力で強引に追い払った訳でしたが)のは俺たちなのに、政府の方針で勝手に新たな開拓農民が我が物顔で侵入してきて我々の牧草地を荒らしているのを追い払いたいという理屈(これ自体には同情の余地がありそうですが手段が悪どい)牧場主の恨みを買う羽目になって、アメリカ・インディアンの居留地があり治安の悪いシャイアンから呼び寄せられた北部出身の悪名高き殺し屋ジャック・ウィルソン(農夫の一人を、南北戦争をネタに巧みに煽って、この時代には法律で認められていた「決闘」に誘き出して“正当防衛”に仕立てて殺す手口は、憎らしく恐ろしいほどお見事(演じるウォルター・ジャック・パランスはこの迫真の悪役演技でアカデミー助演男優賞にノミネートされる)。

実はシェーンも同業の殺し屋か賞金稼ぎだったようで、お互いの速撃ちであるという噂を知っていたことが決闘時に判明する。そして、手強い悪党牧場主一味と、多勢に無勢の状況で命を賭して闘ったのも、やはり一番の理由は、この、美人で良妻賢母のカミさんに惚れたからであり、その事情を非常にうまい演出で描き出した監督の手腕が素晴らしい。

また、この監督の、動物の動きに登場人物の心情を稼託させたテクニックも素晴らしいですね。

冒頭の野生のシカが荒れ地を流れる川面の水に口を付けるところを、弾丸が抜かれてはいるが本物のライフル銃で狙うジョーイ少年の気配を感じて逃げるシーンは、その直後に登場する、この時点では無法者の一員だと思われたシェーンに対する、開拓農夫の妻、マリアン・スターレットの恐れを描き、また、単身、ライカー一味との会合と称した罠に臨もうとするジョン・スターレットを諌めようとするシェーンとの暗闇の中での格闘シーンでは、最初は家畜の馬の嘶きと殴り合いの音だけでその恐ろしさを描いてから実際の格闘シーンに移る描写手法を採用し、

そして人間の側に常に寄り添う存在の犬については、ジョーイ少年にいつも忠実に付き従う唯一の友として、

また、酒場に居着いている老犬は、喧嘩や撃ち合いが開始される雰囲気を察すると、ノロノロとした動きでその場を逃げようとすることで、観客にその事態を“予告”したりと、心憎い演出をいくつも手掛けていましたね。

まさに、子供にとってはシェーンの正義のヒーローたるかっこよさに惹かれる西部劇として、

そして大人にとっては、哀愁溢れる大活劇風メロドラマとして、

この頃のハリウッド映画では、不倫を描くのはタブーだったため、マリアンとシェーンの秘められた中にも溢れるような心の交流を描く際に何回も何回も流れる“マリアンのテーマ”(サウンドトラックの原題は「牧歌的」でしたが、私が勝手に命名)が心の琴線に響き胸を締め付けられる。

無骨で野暮ったいが正義感溢れるリーダーとしての姿に惚れた夫との、やむを得ない事情による格闘を制して、単身死地に臨もうとする、今まで出会ったことのない魅力を振り撒くシェーンに別れを告げる際の、マリアンの精一杯の愛情表現だった握手は、どんなキスにも勝る感動的なシーンとなりましたね。

映画全編に流れる、ヴィクター・ヤングの名曲「遥かなる山の呼び声」のBGMと相まって、音声ガイドは、この映画の魅力をさらに効果的に強調されていたように思いました。

そして、この映画の監督と主演女優も、監督が惚れていて追い掛け回し、彼女は、自身は取材のためにカートを引き摺りながら、一緒に監督を引き連り回している好例といえますね(笑)。

「新聞記者」という映画の原案(こちらの映画の原作は、書籍版『新聞記者』ではなく、実は『同調圧力』という著作をもとにしていて、さらにこの映画は事実に基づく“フィクション”だったのですが)のモデルとなった、東京新聞(正確には、東京新聞を発行する...

Posted by 池淵竜太郎 Ryutaro Ikebuchi on Monday, November 25, 2019


いやぁ、映画って、本当に素晴らしいものですね♪

それでは、
サヨナラ
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