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ファッション誌に学ぶ、こころの筋トレ

先日、書店で女性向け雑誌コーナーををぶらぶらしていたら、こんな文言が目に留まった。

「好奇心や勇気の筋力をつけて新しい私へ!」

二十代向けファッション誌「MORE」の表紙にあった文言だ。
最新号は橋本環奈ちゃん。ビューラーで上げきっていないまつ毛、かわいい。安達祐実みたいな目元だな。きれいな三白眼。

左上をご覧ください!

今秋はジャケットか…言われてみればチェック柄のジャケット、よく見かける気がする。トラッド流行ってるもんね。MOREはコンサバ寄り?なように見えるので、わたしがジャケットを見たお店はMORE女子が好きそうなブランドではないような気もするけど。

そんなことはどうでもよくて、目に留まったのは左上の文言である。
「好奇心」「勇気」「筋力」…どこか素朴めいていて、ちょっと体育会系の匂いがして、丸の内OLをイメージした「十日間これだけで着回し勝ち組!」みたいな特集を組んでそうな雑誌には、なんだか似つかわしくない単語の羅列に思える。ずっとそういうコンセプトなのだろうか? MOREは、わたしが高校生の頃入院したとき、古文の先生が差し入れに持ってきてくれて、その一冊を隅から隅まで熟読したことがあるのだけど、そんなんだったっけ? 

気になってバックナンバーを調べてみたら、この文言が載り始めたのは2023年8月号からだった。思った以上に最近。その前は「選べる私、最高だ!」。創刊45周年記念号である2022年7月号にテーマとして掲げていた文言を、そのまま約一年引き継いだよう。

選べる私か…なかなか素敵だ。でも、ちょっと違和感がある。「選べる」とわざわざ書いてあるということは、それまで「選べない私」だったのかな。選べない、選んではいけない…「選んでいい」という許可を自分にしてこなかったのかな。幼少期に誰かから禁止され刷り込みとなり、大人になっても自分に許可が与えられなかったのかな。
…ん? なんだかこの「私」、ACぽくないか? 

「選べる私、最高だ!」

        ACのこころの声…? 

かつてACだった「私」が、憧れの服を着たり好きなメイクをしたり、ちょっといいアクセサリーを眺めたり髪型に凝ったり、なりたい自分に近づくことをひとつひとつ実践してみる。「MORE」を通して、「わたしは理想の自分に近づくために時間やお金を遣って良い」「人の目を気にせずおしゃれをして良い」「ずっとロングが似合うと言われていたけど、気分でショートにして良い」「わたしなんかが…と思わずに、高級ブランドのアクセサリーを手に取って良い」等々、あまたの自己実現の一歩を踏み出していく。「選べる(わたしが選んで良い)ってこういうことなんだ!」と開眼していくのだ。

着たい服を着、やりたい髪型を叶え、欲しいものを手にしてみることができた「私」は、わたしは(わたしも)心地よい環境に身を置いていいのだ、と認識できるようになる。わたしは、つらい環境で耐えなければならない存在ではない。やりたいことを我慢しなければならない存在でもない。苦しいところから逃げていい。もっと好きなように生きていい。誰かの犠牲にばかりならなくていい…。
「私」はそうやって自分の力を取り戻していく。自分の素直な気持ちを丁寧に追いかけ、その気持ちの示す理想の自己像に、実際に近づいていこうとする姿勢で行動するのだ。

やがて「私」は、やりたいことをやってみること、つまり、自分の好奇心に実際に従ってみることができるようになる。
好奇心に従うには勇気がいる場合もあるだろう。失敗するかもしれない、とてつもなく大きなものを失うかもしれない…そんな不安がよぎりながら、でも実際にやってみるのだ。ただ、自分の好奇心のために、勇気を振り絞って。

何度も何度も、もがいたり、進んだり後ずさりしたり、足踏みしたり。やりたいようにやってはみたけれど、これまでの自分の思考・行動パターンとの相違が大きすぎて戸惑ったり、苦しくなったり。でも、そんな感情を抱えながらも決めた道を進んでみる。向かい風の中を歩くみたいに。
そうやって、たとえゆっくりでも歩みを進めた先には、過去の思考・行動パターンから脱出した「新しい私」がいるのだ。

「好奇心や勇気の筋力をつけて新しい私へ!」

そう、これが最新号の「私」。
なんて素敵なんだ!

「MORE」を読んでいる20代女子、きっとこうやって悩んでいるひともいるんだろうな。わたしも含めて。
大丈夫、好奇心に従って、やってみよ。一緒に筋トレしよ。

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