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パリで日本の味(素晴らしき読書体験)

読書で私がもっとも好きな食のシチュエーションは異国で日本の味を食べる!だ。
先日、ミステリ物を読んでいてパリの美術館で爆弾騒ぎがあり、日本人のカップルがそこに居合わせる。
カップルはある夫婦とそこで顔見知りになる。爆弾はのちに誰かのただの置き忘れの旅行カバンと判明するが、同時刻に夫婦の兄が殺害されており、刑事は夫婦のアリバイを調べにカップルの元へのやってくる。
カップルの彼女はある推理をめぐらし真相へ行きつく…というストーリー。
ここでカップルの彼女は彼氏のパピィ(お祖父ちゃん)のアパルトマンで日本のカレーライスを作るのだ!
日本食材店でカレールーを買い、土鍋でご飯を炊く。フランス人の叔母が日本のカレーライスが食べたいとリクエストしたのだ。
なんだかめっちゃ美味しそう!
フランス人も大好きな日本式カレーライス。前菜はニース風サラダである。
インゲン、サラダ菜、ゆで卵、ツナ、海老、パプリカと色彩豊かなパピィの手作りサラダだ。こりゃーなんて美味しそうなんでしょうね。デザートは叔母の手作りの洋梨のタルト。すごーくおしゃれ!ハイカラ!あたり前だよ。おフランスざんすよ。

私の育った北関東のど田舎では来客の時は朝から手打ちうどんを打ち、田舎臭い汁につけて食うというまことに垢抜けないご馳走しかなかった。汁がまたしょっぱく、食べるときもうどんをずるずるすする音が土間に響き、薄暗い日本家屋の中はひんやりしていた。
土臭い生活しか知らない私はフランス、イギリス、スペイン、イタリア、とにかくヨーロッパの旅行記が好きだった。フランス料理など名前を見てるだけで楽しい。

檀一雄の「火宅の人」でも主人公がヨーロッパ旅行する場面など真剣に読んだ。
市場へ行き、アンティーブとシャンピニオン、野生味溢れる酸っぱい林檎などを買い、酒を飲む、そして女だ。

暮らしの手帖の別冊、ご馳走の手帖に載っていた家族旅行でフランスへ行った方のエッセイも好きだった。
夫は大の和食党でフランスの食事に耐えらるかしら…と奥さんは心配しつつ、スーツケースにインスタント味噌汁やきつねどん兵衛を詰めてフランスの娘夫婦のもとへ。
フランスの海辺で魚介料理やポンムフリットとムール貝を食べたり、スイスへ行って日本料理屋でうどんやとんかつ定食を食べてうどんは期待はずれだった…など。
この話は何度も何度もくり返し読んだのだが、ご馳走の手帖を読んでいたのはもう7年も前になる。読書というのは脳にしまっておけるんだなぁ、うろ覚えになっているが、わくわくしながら読んでいた当時の自分の気持ちがまだ思い出せる。

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