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運命のサインーーーささやかで、ともすれば見落としかねないような。

ーーー出会ったとき、ビビっときて。


運命の人との出会いを想像するとき、そんなフレーズが浮かぶ。
白馬に乗って現れることはないし、落としたハンカチを拾ってくれる紳士もいなければ、赤い糸も見えそうにないので、何かしらのサインを期待してしまうのかな。


わたしが今の夫と出会ったとき、もとい、夫を最初に"見た"とき、夫が纏っていたのは、ビビっとくるような衝撃でもなければ、キラキラしたオーラでもなく、ただ純粋で飾りけのない雰囲気だった。

夫を最初に見たのは、就職活動で、あるセミナーを受けていたときだった。
そこでは一人ひとり前に出て、面接の練習をさせられた。

セリフを読むかのように手馴れた人もいれば、もじもじしてちょっと不安な感じの人もいる中、夫はなんだか違っていた。
面接官の質問を聞いて、その場で考えて、そのままの自分で答えていた。

就活の雰囲気を知っている人なら分かると思うのだけど、そういう人って案外少ない。
皆、自分を良く見せるため、事前に素晴らしいセリフを練って来ている。けれど、わたしも働いてみてやっと分かったのだけど、そういうセリフほど採用側も構えてしまう。


夫は、面接官に愛想笑いをするわけでもなく、ただ思ったことをそのまま言ってますというふうだった。その姿が潔く、爽やかに見えた。

見た目はと言えば、夫はどちらかというと若く見える方で、こんなことを言えば本人はふてくされるんだけれど、その純朴な顔つきに、何とも少年のような可愛いらしささえ感じた。
それは、ドキドキするようなときめきとは違った。男性にそんな印象をもったのは初めてだったかもしれない。

面接の練習が終わると、夫はわたしの二つ隣の席に座った。夫とわたしの間には男性がいて、そのまま解散となり、特に話をするわけでもなかった。だから、出会ったというよりは、わたしが"見た"という感じ。


その後、なんと、本番の面接会場で夫と再会することとなった。グループ面接に至っては、同じグループになった。偶然がどんどん重なる。後日、二人とも無事採用され、課こそ違うが、同じ部署に配属された。

今書いていて、この偶然の重なりの方がよっぽど運命のサインらしい。

確かに、運命に偶然はつきものだと思う。

けれど、わたしにとって、最も心に残ったのは、重なる偶然ではなく、最初の印象そのものだ。夫を最初に見た時の、最初の最初の印象。
まるで、そよ風にはっとさせられたようなささやかなサイン。

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それは雷にうたれたような衝撃的なものでもなければ、糸を引かれるような確実な気付きでもなかった。

ありふれた毎日の中に訪れる、ささやかで、ともすれば見落としかねないような。

覚束無いそよ風のような。

わたしに訪れた運命のサインは、そういう不確かな一瞬の風のようだった。



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運命の人

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