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地域おこし協力隊を呼べる記事を考える

※この記事は基本的にミッション型の地域おこし協力隊募集について書いています。ただし、フリーミッション型でも使える話はあるかもしれません。

うがみあぶら(方言でこんにちは)、ネルソン水嶋です。ベトナムから、2020年7月に母の故郷である沖永良部島に移住、1年半の月日が経ちました。

昨年8月に会社を立ち上げつつ(詳細)、その事業とは別に、ベトナムにいた頃から変わらずライター業も続けて11年目。新聞記者という肩書きが増えたは自分も想定外でした。

でで、本題。ときどき町から執筆のお仕事を受けるのですが、その多くが人材募集関係です。ありがたいことにこれまで、5件の地域おこし協力隊(※)の募集記事制作に携わらせていただきました。1年半で5件という数字に和泊町が変わろうとする意志を感じ、いち町民としてもワクワクします。

※地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期は概ね1年以上、3年未満です。

総務省|地域力の創造・地方の再生|地域おこし協力隊

そんな募集記事はしばしば、いくつかある移住マッチングサイトとも呼ばれるプラットフォームに掲載されます。仕事を受けるにあたってはじめて知った存在で、そこでは全国の地方自治体によっておらが町的アピール合戦が繰り広げられており、地方の人材不足を如実に反映しています。自分が記事を書くにあたりほかの地域の募集記事を覗かせてもらうこともあるのですが、同時に「もっとこうしたらいいのにな」と思うことも少なくありません。

いきなりえらそうなことを言ってすみません。ただ、あえて言いたい、ショバ代払ってるのだから充実させるに越したことないはずです。もちろん、こう書けば人は来る!という魔法はまずないし、記事だけ良くても他がダメなら応募や採用に結びつかないと思いますが、記事の充実はミスマッチを防いで応募の可能性を高めるのは間違いないです。もっと言えば、うちんとこ来ないか?と言うのなら、その地域が伝えるべきことってたくさんあると思います。そして、その責任を果たそうとしている地域は誠実かつ魅力的です。

私自身も勉強中で、今から書くことが全面的に正しいっす!というつもりは毛頭ないですが、今回は自己整理も兼ね、いつも自分が意識しているポイント、あるいはこれから注意していきたいチェックリストを書き出してみようと思います。違ってもこういう考え方もあるか~と参考になれば幸いです。

地域おこし協力隊を呼べる記事を考える

課題をていねいに晒す

地域おこし協力隊は「その地域への定住・定着を図る取組」ですが、都市地域から人を募ることもあり、今いる地域住民には解決が難しい課題に対応できる人が求められる傾向があるように感じます。というより地域にいるなら新たに職員募集すればいい訳で、という話を役場で聞いたことがあります。

Uターンならともかく、縁もゆかりもない人に根を張ってもらうために必要なものが「自分でなければ」という使命感です。だからこそ、うちの地域にはこんな課題があって、それを解決するためにこんな人が必要でと、人材像まで深掘りしたいところですが、募集記事を見ているとそれに言及されていないものもたまにあります。あるのかもしれないけれど、書かれていない。

商店街が空き家だらけ、自慢できる特産品がない、宿がない、などなど。地域の課題って、もしかしたら賑わっていた時代を知る人からは恥ずかしいところだと感じるかもしれませんが、私の解釈ですが、地域おこし協力隊という制度は、そんな課題解決が大好物の人に来てもらうために活用するものだと思ってます。課題を書かない=解決するものがないとなってしまいます。

そんな、言わばメインディッシュを書かない地域も意外と見かけるのです。

キーパーソンが顔出しで登場

課題があるということは、必ずそこには頭を悩ませるキーパーソンがいるはずです。前述した「課題を晒してない記事」はなんだかんだで少ない方なのですが、意外と多いのが、美しい農村などの写真を並べる一方、「誰も人が出てこない」という内容。ゴーストタウンの印象を与えることと同じです。

課題に関わるキーパーソンに必ず顔出しで出てもらいましょう。その人がそのまんま、課題に取り組む地域おこし協力隊にとってのキーパーソンなのですから。想像できる人ほど、「着任後に自分は一体誰と仕事をするのか」と不安になるかもしれません。たとえば、魚介類の特産品開発なら漁協の会長だったり、商店街の空き家改修ならその地区の区長さんなど。役場の担当者の顔も大事です。人の顔は、思う以上に人柄という情報が詰まっています。

なお、写真を撮るときは笑顔がマスト。仏頂面だと逆効果。

肩書きをつくる

地域おこし協力隊が関わる仕事は、役場が名付けることもあり、前例がないと説明的になりがちです。たとえば、「空き家対策支援員」とか、「特産品開発担当者」とか。今適当に書きましたけど。だけど肩書きがあまりに固い感じだと、ワクワクしない上に、覚えづらい=印象に残らないですよね。

なので私が関わるときは、はじめに名前を付けることからやっています。それが担当者との要件定義の整理と、共有にもなります。水産加工の特産品を開発する人なら「シーフードプロデューサー」とか、自転車でまちづくりをする人なら「チャリおこし協力隊」とか、ICT支援員なら「DX先生」とか。これらは実際に付けた例です。シンプルにキャッチーにもなります。

これが良い名前かどうかは受け取る人次第ですが、少なくとも伝える相手にとって、「地域おこし協力隊」と伝えたところで具体的に何をするのか分からない訳です。JICA協力隊(旧・青年海外協力隊)のOBの友人が、「アフリカで井戸を掘ってると思われている」と嘆いていたことがありましたが、テレビかなにかの影響なのか、謎なイメージが付いてしまうこともあります。

だから、その仕事に合わせて、パッと聞いて少しはイメージが湧く名前を付けた方が良いと私は思っています。また、これには募集時だけでなく着任後のメリットもあるようです。さきほど挙げたシーフードプロデューサーなんかは、担当者の顔が広かったり、町の広報誌で募集をかけていたので、着任前に地域の人達により(肩書きが)覚えられており、いろんなところで「あなたがあのシーフードプロデューサー」的な会話がよくあったようです。

「未経験者歓迎」と安易に言わない

「課題をていねいに晒す」と近いですが、「未経験者歓迎」と安易に言わない方がよいかもしれません。未経験者にできる仕事は、誰でもできるというメッセージを伝えてしまい、応募のハードルを下げてしまいます。応募が多いに越したことがないと思われるかもしれませんが、その人でないといけない理由もまた薄いので、使命感が薄く、定着しない可能性も高くなるかも。

100人の応募よりも1人の採用です。下手に焦って未経験者歓迎を謳ったことで、採用したものの成果を上げられず半年で帰って無駄に税金が消えるよりは、最初からその仕事に取り組める経験やスキルを明確に示した方がよいと思います。その方が、本当にマッチングする経験を持っている人に、「自分が必要とされている」と使命感を持って応募してもらえるはず

移住後のフォローは丁寧にしっかりと

人ひとり、場合によっては家族ごと、今いる土地を離れて来てもらうのだから、その受け入れ体制は書いても書きすぎるということはないと思います。

住居の設備、周辺環境、車などの移動手段、暮らしをフォローする担当者が明確にアサインされているかどうか。先輩移住者が相談に乗ると顔と名前まで明記されているとより心強く感じるかもしれません。地域おこし協力隊の先輩のコメントが必ずあっても良いかも。今度機会があったらそれしよう。

また、あくまで任期を終えたあとの話ですが、キャリアパスについて言及しておくことも大事だと思います。もちろんキャリアは本人が決めることなので、書きすぎるとプレッシャーになるかもしれませんが、地域側が思い描く絵によって見えてくる現状やニーズもあります。なによりも、応募者の移住に対する不安を解消する上で、「気に掛けている」という姿勢が大切です

地域の老若男女が登場

キーパーソンを出すことに近いですが、なるべく幅広く老若男女の方に登場してもらうことは大事なように思います。よほど過疎化が進んでいない限り老若男女は揃うかと思いますが、記事に出てもらうことで「この街は世代を越えてコミュニケーションが取れているんだな」という印象が伝わります。実際のところコミュニケーションが取れていたとしても、見せなければ「コミュニケーションが取れていない」という誤った印象を与え兼ねません。

町並みの写真を出す

プラットフォームによっては掲載できる写真の点数も限られるので、あくまで可能であればですが、自然ばかりではなく、町並み(居住地域)の写真を出すことも大事です。住む場所が林の中など本当に自然ならよいのですが、地味であっても実際に生活するエリアは誰もが気になるところと思います

とにかく誠実かつ正直であることが大事だという気がしてきました。

記事についてはここまでです。

記事を書いたらあらゆる手で知らせる広める

ここまで書いておいて言うことじゃないかもしれませんが、プラットフォームに記事ひとつ公開しただけで人を呼べると決して思わない方がよいです。油断大敵です。注目記事とピックアップされれば、多くの人目に触れると思いますが、そもそも求める人材がプラットフォームにいない可能性すらあります(人材的にいたとしてもタイミング的に来ないということも含めて)。

記事は資料請求におけるパンフレットのようなものだと思ってください。つまり、作ったところで、請求(記事にアクセス)してもらわなければ意味がありません。たとえば課題に関連性の高いメディアにプレスリリースを出したり、分野の学科がある教育機関に連絡することも手段としてはあります。

すでにほかの地域で、類似性の高い地域おこし協力隊が活動していれば声を掛けてみるのもよいかもしれません。地域おこし協力隊の方は、地域に活動を知ってもらうため任務として情報発信を担っていることが多いので、ネットリサーチだけで見つけやすいです。類は友を呼ぶよろしく、横のつながりからよい人を紹介してもらえる可能性があります。リサーチ&アプローチ。お金はかかるかもしれませんが、相場もピンキリでしょうし、その地域のことを発信しているインフルエンサーにPR依頼を検討するのもアリでしょう。

記事を書くことはお金がかかっても、それを宣伝するだけなら、意外と無料でできることってたくさんあります。ルール無用のデスマッチ…じゃないですが、手の込んだ記事を公開したら、あらゆる手を尽くしてみてください。

応募候補者に向けてオンライン説明会を開く

これは私はふだんやっていませんが、聞いて「なるほど」と思ったこと。以前関わった募集案件で、これがけっこうな数の応募者が集まりまして、途中でオンライン説明会を開いたそうです。確かに、合否を左右する面接だとお互いに気を張るので、その意味でも気軽に話せる機会があるっていいなと。それに、参加した人は、よほどのことがない限り、参加前よりも前向きに考えますよね。きっとこれ、やらないより、やった方が断然いいと思います。

記事以外のコンテンツも大事

さっきから、記事、記事、と書いていますが、そもそも今豊富にコンテンツプラットフォームがあるインターネットで、記事(文章と写真)だけにこだわる必要はどこにもありません。むしろ移住マッチングプラットフォームは戦場化しているので、あえて他で戦う方がよい場合もあるでしょう。

予算次第では動画をつくってYouTubeにあげるとか、課題について担当者が喋る音声コンテンツをSpotifyにあげるだけならタダ同然です(というかタダ?)。いろんなアプローチがあると思います。さきほども書いた通り、メディアなどに直接知らせる以上、コンテンツはどこにあげてもいいのです。

最強なのが、自前のメディアを持っておくということだと思います。

「地方移住に興味のある人向けのマッチングプラットフォーム」よりも、「その地域への移住に興味がある人向けのメディア」の方が、当然ながら深く刺さります。そもそもそこに到達している時点で、その読者の移住に対する本気度はまったく違うかと思われます。もちろん定期更新となればその分コストは重なるので、地域おこし協力隊募集のときでなくとも、ふるさと納税のお知らせだったり、地域こそメディアを持つべき。地域メディア自体は7~8年にブームがありましたが、やはり人が集まる都市部に集中していた印象です。今後、人が分散していく上で、すっごいおもしろい田舎メディアが増えていくんじゃないですかね。知らんけど。ぜひご検討ください。

地域おこし協力隊募集記事制作ご相談ください

率直に言って「勉強中」の私ですが、だからこそこういうことを意識しながら記事を書いていますということを今回書かせていただきました。今後、沖永良部島も含めてとくに奄美の持続的な発展に役立ちたいと考えています。

お近くにご相談相手がいない場合、お気軽にお声がけください。
それだけで飛び上がるほど喜びます。


合同会社オトナキ代表・水嶋(mizushima@otonaki.com

ぜんぶうまい棒につぎこみます