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異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ―できれば水風呂と外気浴スペースもつけてください―
第一話 セレーネ姫、サウナでととのう 鳥も獣も、空を駆ける竜もみな寝静まり、虫の声と木の揺れる木のざわめきしか聞こえない夜更けの森。緑の月の光も届かない、背の高い木々の作り出すくろぐろとした闇の中を、一人必死に走る若い女がいた。
粗末な外套では隠しきれない、上等な夜着と靴が、森の泥に汚れていく。
「もう嫌、なんで私ばっかり!あんなブサイクと結婚するなんて、絶対にごめんですわ!」
はぁ、ひぃ、と
#異世界サウナ 番外編 1ー④
前回
「というわけで、いよいよ人間側の二人目、最後の方になりましたが……えっと、ホルヘさん、でいいんですよね」
「ウム」
最後にあらわれた一人は、どう見ても腰の曲がった老人だった。足元もおぼつかないようで、サウナ室の雛段から降りてくる時も倒れそうになっていた。
「おじいさん、大丈夫?さっきから熱波をずっと受けてて、フラフラしてるけど」
「ウム」
アミサの言葉が聞こえているのかいないのか、もご
#異世界サウナ 番外編 1ー②
前回
「次のアウフギーサーは……人間から、『使い魔術師』のオルメンさん!!」
「フフ……皆様には『使い魔』のすばらしさを体感していただきましょう……」
次の呼び込みで前に出たのは、キザなふるまいの初老の男性。一礼すると、持っていたかばんから何かを取り出し準備し始めた。
「えー、オルメンさんが準備している間に軽く説明させていただくと、『使い魔術師』は人形『使い魔』に魔術をかけて、いろいろな命令を
#異世界サウナ 番外編 1ー①
本編
「第一回!人間・魔族対抗アウフグース対決ゥーー!!」
「「「イエエーーーッ!!」」」
『マイク』を持ったアミサが元気よく叫ぶと、『みなの湯』のサウナ小屋に集まった客たちは歓声を上げた。人間と魔族の割合はちょうど半分ずつ、そして老若男女様々なサウナ愛好家たちだ。
「今後『みなの湯』名物にしていく予定の2つの要素……ストーブの石に水をかけて蒸気を楽しむロウリュと、その後タオルなどで扇いで熱風
#異世界サウナ 全話まとめ読み版
異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです
ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー第一話 鳥も獣も、空を駆ける竜もみな寝静まり、虫の声と木の揺れる木のざわめきしか聞こえない夜更けの森。緑の月の光も届かない、背の高い木々の作り出すくろぐろとした闇の中を、一人必死に走る若い女がいた。
粗末な外套では隠しきれない、上等な夜着と靴が、森の泥に汚れていく。
「もう嫌、なんで私ばっかり!あ
これから始める #異世界サウナ
この記事は『異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー』通称#異世界サウナの完結をきっかけに、noteで読んで頂く方に向けてわかりやすいように、作品紹介と目次的な記事をつくることにしました。
作品全体へのリンク現在noteとカクヨムで連載中です。
全話まとめ読み版はこちら
ポイント①ファンタジーとサウナが融合した小説!読めばサウナに入り
#異世界サウナ エピローグ+あとがき【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
ライオンマスクからのお知らせ:課金記事になっていますが、エピローグは全て読めます。課金するとあとがきが読めます。おたのしみください。
前回
――声が、止んだ。
近くから、遠くから、あらゆる場所から聞こえていた、助けを求める人々の声。魔族と戦う戦火の音。それがある日、ふいに消えた。
その日、私はほんとうに久しぶりに、私のまま目覚めた。眠りをほとんど必要としない体の、ほんの少しの睡眠……いつ
#異世界サウナ ⑨-4(終)【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
前回
アウフグースで急激に温められた体を水風呂で一気に冷やし、そして外気浴の長椅子にごろりと横たわる。心臓が急ピッチで全身に血液をまわし、体全体で鼓動しているような錯覚さえ覚える。そんな命の危機すら感じる状態から、外気浴によりゆっくりと体が平常に戻っていく。
(もしこれが体に悪いとしても……いやそんなことはきっとないのですが……やめられませんわ~♪)
国王、セレーネ、ショチト、ユージーンの4
#異世界サウナ ⑨-3【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
前回
「やっぱり、『みなの湯』のサウナは素晴らしいですわね……」
2度めの外気浴を堪能しながら、セレーネが気持ちよさそうに言った。
「人間と魔族の文化の融合……どうして、今まで誰も行おうと思わなかったのかしら」
国王は娘の言葉に、ちらと彼女のほうを見てから、ため息をつきつつ答える。
「……魔族に文化があるなど、我々は考えてこなかった。いや、考えないようにしてきた」
その声には最初に出会った
#異世界サウナ ⑨-2【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
前回
ユージーンがひととおりサウナの入り方……サウナ→水風呂→外気浴のサイクルを説明した。
「体を温めるのは、まあわかる。だが、水風呂というのは、一体どういう了見なのだ。魔族の文化は理解できぬな」
国王は至極もっともな疑問を呈し、それにはセレーネが応えた。
「お父様、水風呂はすごく良いのですわよ!全身がぎゅーっと引き締まって、頭の中まですっきりするし……そのあとの外気浴がとても心地よいのです
#異世界サウナ ⑨-1【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
前回
前回、いい感じのモノローグを解説パートで入れたので、それをラストにできればよかったのだが、ここでもうちょっとだけ口を挟ませてほしい!
『サウナ外交』というのは、実際に行われていることなのだ!
サウナの起源でもあるフィンランドでは、あらゆる施設にサウナがある。それは各国のフィンランド大使館も同じで、もちろん日本のフィンランド大使館にもサウナがあり、多くの関係者が招待されているのだ。ここ
#異世界サウナ ⑧-4(終)【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
前回
そこから先は、公式の記録には詳しく残っていない。
突然魔族側の陣地にあらわれた邪竜、通称〈汚濁の邪竜〉は迎え撃った『勇者』を圧倒的な質量で押しつぶすも、その後こちらも突然あらわれた白い竜――汚濁を洗い流す瀧の竜、通称〈瀧竜(ロウリュウ)〉がぶつかったことで勢いをそがれたという。そこに『勇者』の最後のひと押しが加わったことで、〈汚濁の邪竜〉は討伐されたという。
『魔王』は〈汚濁の邪竜〉
#異世界サウナ ⑧-3【異世界で追放されても、サウナさえあれば幸せです ーできれば水風呂と外気浴スペースもつけてくださいー】
前回
戦場に邪竜があらわれる少し前。ユージーンは、ひと仕事終えてサウナに入っているところだった。
(やはり良い……狭い空間ならではの、蒸気の速やかな広がり……持ち主だからといって、わずかな時間独占させてもらったのは、少し申し訳なかったな)
息を深く吐きながら、対応で疲れた体を癒やしていると、突然、異様で巨大な気配を感じた。咄嗟にタオルをつかんでサウナカーを飛び出し、気配の方向を見て、ユージー