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『月はキレイかもしれないね』⑤(創作小説)

5.アオ

たまに、アオという名前がカタカナであることを不思議がる人がいる。
俺の名前はアオだけど、色じゃないんだ。
両親がハワイに旅行しに行った時、ハワイの歴史にハマったそうだ。
それから、旅行を通して現地で知り合った新しい友達。
彼らが好きだと言ったハワイ語の単語の1つがアオ。
これは光とか夜明け、世界を意味するそうだ。
俺自身はハワイに行ったことがない。

なんとなくいつもクラスの中心にいるタイプだった。
目立とうとしなくても、目立った。
高校生になってから、バスケ部に入ると先輩たちからは
「お前が来ると空気が変わるんだよ。」と言われた。
これを良い意味で言ってくれる人と、そうでない人がいた。
どうでも良い。
なんだか退屈だった。
他の人と同じように勉強して、遊んで。
特に部活友達とは一緒にいる時間が長いから、
体育館でも、帰り道でも話す。
部室でも話しまくった。

ただ、そんな生活だと彼女ができても、すぐに終わってしまうのは
今でも反省している。

忘れられない。
「部活と私との時間どっちが大事なのか本当わかんない。」
こう言ってきた元カノの1人。

いつも通り遅くまで練習して、ご飯を食べて、
寝る前にメッセージを確認。

信じられない着信数。
ヒマなのか?!そんなことは言えない。

めちゃくちゃ責められながら、あーこれはいつものパターンだって
自分でも分かるんだ。
この関係が終わってしまう。

上手くやれないんだ。
部活は好きだし、拘束時間も長いんだ。
週5は部活があって、週末には試合がある。

君にも幸せになって欲しいから…言いかけてる間に寝てしまう。
「最低!!」
寝落ちが相手にバレて、再度怒鳴られる。
だめだ、起きていられない。
スマホが音を立てて、床に落ちても落ちても気づかない。


部屋をノックしている音が聞こえる。
「朝練は?!」

あれ?アラームなんで鳴らないの?
充電切れのスマホが床の上に転がってる。

やっべえ、もう取り返しがつかないや。
こういうことを繰り返しちゃいけないと思うけど、
どれも大切な時間なんだ。
必死に起きて、朝ごはんを食べたら自転車で学校に向かう。
これがちょうど良いウォーミングアップなのだ。

朝練が終わって1時間目が始まる前には、お腹が空く。
自販機のスナックを食べてる時に、
ロッカーで昨夜怒鳴っていた相手が、ふと目に入る。
もちろん無視される。

あ、スマホの充電切れたまんまだ。
練習も楽しいし、やりたいことがたくさんある。
なのに、どれも中途半端な気がしてしまう。
いっそ地元から離れて、新しい世界に踏み入れたいと願った。
誰も俺を知らない新し世界へ。

わずかな間でも良いから、拘束時間から解放されてみたい。
離れて俯瞰することから、中途半端で満足出来ない退屈な世界を
打破したいと思った。

地元は狭すぎる。
誰も俺を知らない世界に行きたい。
そしたら、地元に帰りたいって思うかな。

そんな時にユーゴが旅行の話をしてきた。
資金も十分じゃないから、行った先のビーチでバイトしながら夏休みの間
新しい世界に進む旅。

すんごい面白そう。
車は父さんが貸してくれると言った。

期待に胸が張り裂けそうだ。

「面白い新しい世界をみたい。」


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