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多肉植物でいっぱいのカフェを開く夢を。

たまに、なんでこんなにスキンケア頑張ってんだろう、て。
思う時がある。

夏の終わり。
あいみょんのライブの帰り道。

眼前に伸びる長い線路の先で、沈みかけの真っ赤な太陽が、もう少しだけ世界を照らそうと頑張っている。
街全体を夕陽がすっぽりと包みこんで、何もかもをオレンジ色に染め上げてしまった。

突然、君の歩みは鉛のように鈍くなり、何かの言葉を紡いだけれど、判然としない。
それをやっと理解できた頃には、僕の胸にはこの街より一足早く、黒い帳が下りていた。

別れたい。
そう言っていた。

あふれ出そうになるどうしてを、喉の奥にむりやり押し込んで。
僕はただ、二の句を継げずに歩調だけを合わせていた。
踏切の一歩手前で、否応なく横並びに佇むしかない僕と彼女を、今日という一日の残り火が容赦なく包み込んでいく。

彼女は静かに染まるオレンジ色の瞳で、僕の顔をじっと見つめていた。
長い睫が、怖いほどに揺れている。
線路を挟んだ向こう側の人たちは、皆ただの黒い塊になってしまった。
彼らから見た僕の姿も、同じようにただの黒い塊になっただろうか。

君の多肉植物でいっぱいのカフェを開く夢。
本気で素敵だと思ったんだ。
紛れもなくあの頃僕たちのすべてだったもの。
それを否定してしまったとき、いったい何が残るのだろう。

あれから少し、肌がキレイになったよ。
だからどうしたんだろうね。
たまに、なんでこんなにスキンケア頑張ってんだろう、て。
思う時がある。


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