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POD短編集「風にまつわる越佐幻想」について

というわけで昨年から進めていたPOD専用、つまり紙本のみの短編集「風にまつわる越佐幻想」が2月14日にAmazonで発売開始となります。
既存の短編6本収録で約300ページというPOD本としてはボリューム多めの1冊となります。
本日、校正刷りが届いてチェックしているところですが、多分、大丈夫だろうと思います。

コンセプト
当初、POD専用の短編集を作ることにした時、最初に思いついたのは、実質分冊だった初期の「ピーカブー!」と「怪物少女フォーエヴァー」を1冊にまとめることでした。2016年頃に「ゆくゆくは(電子で)統合版を」とアナウンスしながらも、2020年に5周年で短編全集「STAR STORIES」を出したために有耶無耶になってたのが気がかりだったんですよね。
もうひとつの案が「怪物少女フォーエヴァー」収録作品で評判の良かった「鳥葬」を表題作にして、同作で始まり「青春SPOOKY!」収録の姉妹作「鳥葬その2」で締める全5作ほど収録するプラン。
前者は今の自分から見ると物足りず、後者はどう見ても物量的に多すぎるのが難点で、結局、2015年〜2022年発表作から満遍なく選出する形になりました。

表紙
当初から、「山彦」とは逆のローカロリーでシンプルなデザインにしたいと思っていたのですが、そこはヤマシタナツミさんがよく意図を汲んで下さって、想像以上に良いものができました。民藝運動的な雰囲気もあるし、野島出版の水澤謙一さんの「新潟の民話集」的なテイストもあるし。偶然にも「怪物少女フォーエヴァー」に似てるのもなんか嬉しいものがあります。
あと今回は、「湿気による反りが少ないらしい」という噂からマット調を選んだのですが、ヤマシタさんがさらっと入れてくれた和紙風のデザインが上手いことハマってくれたのも良かったなあ、と。

タイトル
「越佐(えっさ)」は新潟の呼び方としてあまり使われていないのがポイント高かったです。「新潟SF」があれだけ売れてるのを見るとローカル推しは大事だけど「新潟」も「越後」もしっくりこなかった。その中でなんとなく響きが良いので採用、みたいな。だって「ESSA」ですもんね。インテリ系ヒップホッパーな感じ。で、新潟県のオカルト民俗学ファンのバイブルである鈴木牧之の「北越雪譜」、橘崑崙の「北越奇談」っぽい感じで「越佐幻想」にしようと。「怪異」や「怪談」だとちょっと敬遠されそうな気もしました。
ただそれだけでは寂しいので、何か作品たち共通のイメージを、ということで以前に牛野小雪さんだったかな?彼が私の作品に感じるものとしてあげた「風」をテーマにした感じです。確かにそうだな、と思ってたので。好きなんですよね。風が吹いているだけでQOLが上がる人間なのです。春や夏の夜風はもちろん、吹雪も台風も実は好きです。

ラインナップ

「アサギマダラ」(初出 短編集『ピーカブー!』2015/12/7)
虫捕りに来た少年の心に居候することに決めた「私」。彼の心の暗部に触れることが、やがて思わぬ記憶を呼び覚ましていく。

「夜汽車」(初出 短編集『夜汽車』2022/4/9)
新津油田で働く勇作たちの前に現れたのは、不思議な力を持った美しい青年だった。彼は神か仏か、それとも――。変わりゆく世界で彼は何を思うのか。

「はるかぜ」(初出 短編集『魚』2017/11/26)
人生に行き詰まり萬代橋からダイブした遙は、なぜかカラスに転生する。繰り返す4月13日の中で、遙は様々な仲間たちと出会い、考える。

「風、巡り往く」(初出 短編集『夜汽車』2022/4/9)
平成の大合併で消えゆく鹿瀬町。閉校間近の中学校に転校生がやってきた。彼の秘密を知った私は、やがて凄惨な事件に巻き込まれていく。

「月の虫送り」(初出 短編集『875』2020/12/1)
圭吾が棚田で捕らえた奇妙な発光体は、3つの願いをかなえる「ソラ虫」だった。幸運を呼ぶ怪異「ケサランパサラン」をモチーフにした静かな祈りの物語。

「鳥葬」(初出 短編集『怪物少女フォーエヴァー』2016/4/1)
死者にかりそめの命を吹き込む傀儡(くぐつ)師・石上と旅する唯人には不思議な力があった。出雲崎で出会った少女が、彼らの運命を大きく変えていく。

オールタイムベストというわけではなく、全体のバランスを意識して、なるべくバラエティに富んだラインナップを心がけました。おそらく名刺代わりの本になるので、自分の作風の幅とか技術の幅みたいなものを見て欲しいし、POD本は普段と違ってあんまり小説を読まない方にも届いちゃう可能性があることが分かったので、そういう読者にも楽しんでもらえるものを意識しました。6つのうち、せめてひとつは気に入ってもらえれば、みたいな気持ちです。
全体的に大きく改稿しましたが、一部の作品については収録作全体のバランスから物語そのものを変えています。全体の方向性としては「怪奇」と「幻想」の中間のイメージで、「地域の民話集」の現代版みたいな感じになればなあ、と。
最後まで悩んだのは「875」「魚(いよ)」「青春スプーキー」「変人たちのサンタクロース」あたりでしょうか。どれも良いアクセントになりそうなんですけど、ちょっと全体のカラーに合わせにくかったっす。電子での反応を見ても、その辺はあんまりウケなかった、っていうのもあります。
あとはページ数の関係で簡素ですが、セルフライナーノーツが付きます。ていうか、PODはページ数が価格に反映されるし、B6だと物理的に300ページ近くなると開きにくくなるんですよね。

なお、価格はAmazonで税込1890円です。書店では1600円くらいにできればなあ、と思ってます。よろしくおねがいします。

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