見出し画像

【読んだ】異彩を、放て

おすすめ度 ★★★★☆

すごく真摯で、かっこいい話だった。
自閉症の兄を持つ双子の兄弟が、知的障害を持つ人が創るアートをビジネスとして成り立たせていく話。

前半は子供時代からビジネスの立ち上げまでのドキュメンタリー的な話。
自閉症の兄がどういう目で見られてきたか、それをどう感じてきたか。
るんびにい美術館との出会い、アートをネクタイとして販売するまでの苦労。
著者である双子の想いが丁寧に描かれていて読み応えがある。

後半はビジネス書に近い。といっても普通のビジネス書ではなく社会起業という観点だ。
「なぜNPOやボランティアではなく、営利企業なのか」「作者をどうすれば尊重できるか、どう利益を還元できるか」などしっかり言語化されていて、こちらも面白い。

ともすると一般的には、「これしてあげたらきっと喜ぶでしょ?今までスポットライトが当たったことない人たちにこんなことしてあげたら、そりゃ嬉しいでしょ、障害者の皆さん?」という慈善ステレオタイプになりかねません。
お仕着せではなくて、本当にその人達が納得して喜ぶ「幸せ」、それを確かめながら追求して実現していくというのは大きな転換でした。

施設で働く方のインタビューでこう語られるほど、丁寧に作家と向き合っている姿に感動した。

全体的に読んでいてワクワクするし、ヘラルボニー(著者が立ち上げた会社)の商品に興味が湧いてくる。読んだ後HP絶対見たくなる。

めちゃくちゃかっこいいーー欲しい…!

障害は社会の方にある。とはいえ

「この国の一番の障害は『障害者』という言葉だ」というのは2020年にヘラルボニーが出した意見広告で、私もネットニュースで目にした記憶がある。

障害は、「障害者」にあるのではなく、社会の方にあるのだ。資本主義社会の仕組みが「健常者であること」が前提のものになっていて、社会変革やテクノロジーの進化が追いついていないため、やむなく障害が生じてしまっている。

とはいえ。

解消するのは簡単ではない。

こどもの頃、集会でずっと大声でCMのセリフをいい続けている養護クラスの子が怖かった。教室は別の校舎で関わることもなかったし、あの子がどういう子たちなのか誰も教えてくれなかった。

自分が親になって、こどもが障害者差別っぽい言葉を使ったときは「やめなさい」と止めるけど、理由をきちんと説明できているか自信はない。
今でも嫌悪感や恐怖心、軽蔑心がきっと心のどこかにある。
どうすれば解消できるのかわからない。

間違っているのは、障害があるのは、自分のほうだとわかっていても。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?