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【読んだ】寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ

おすすめ度 ★★★★☆

すっごいリアルな高齢者介護の話。
高齢の両親だけでなく叔父叔母夫婦の介護まですることになった筆者の生々しい日々と叫びが書いてあって、経験者なら「わかる!」「書いてくれてありがとう!」と言いたくなる内容のオンパレードだ。

著者の対談が介護サイトに載っていたので紹介。
これを読んで興味を持ったら本も読んで欲しい。

在宅介護は日本の縮図?きれいごとではすまされない介護現場の声を聞く


なぜ私が「わかる!」といえるかというと、3年前に亡くなった父が、若年性認知症だったからだ。

同居して介護したことはないが、もしやってたら確実にメンタルがやられたと思う。当時のことは長くなったので、別の記事に書くことにした。


本では、介護される両親は90代。叔父叔母は89歳。
それぞれに性格が違うが、それぞれに大変だ。

神経質で短気、外出嫌いでお酒好きの父。
自己顕示欲が強く、浪費家で人の言うことを一切聞かない母。
認知症が進み、自宅の生活が困難になってきた叔父。
生活管理能力が低く、手続きや掃除など一切できない叔母。

想像するだに大変である。
対談にも載っていたが、未経験者がイメージする介護は、トイレやお風呂、着替えの世話などのイメージが強いと思う。
しかし、実際に大変なのは、彼らとのコミュニケーションそのものだ。

判断力や理解力の低下、感情のコントロールが利かないなど、まともなコミュニケーションが取れない老父母や叔父叔母との実にくだらない些細な出来事に苛立ち、それが積み重なることで神経がすり減っていくのである。


その些細な出来事というのが、こんな感じ。
トイレの温水便座が壊れてるとわめいて、付け替え工事をさせたり、
勝手に畳の張替え業者を呼んで、荷物の整理は娘にさせておきながら「居候のくせに」と悪態をついたり、
介護認定の面接のときだけ張り切ってまともな振りをする親と、介護等級をなんとか挙げて欲しい著者の攻防など、
赤裸々すぎて、経験者なら首がもげるほど同意するだろう。

介護未経験の人も疑似体験できるし、これから介護されるであろう年代の人は「自分がこうなるかも知れない」という心の準備になると思う。


数年後、数十年後にはどうなってるのだろうと考えると、暗鬱な気持ちになってくる。
高齢者運転による事故や、火の不始末、詐欺被害などはどんどん増えていくだろうし、介護人員不足はすでに危機的だという。
それに対して手を打つべき政治も高齢者だらけだ。

介護保険料も医療費もひたすら上がり続けるだろうが、自分が高齢者になったときにまともな介護サービスがうけられる気はしない。

父を看取ったときから思っている本音を言ってしまえば、尊厳死を合法化してくれればいいのに、と思う。
それは、認知症の父がどんどん父ではなくなっていくのをみていたから思う、本音だ。

自分が自分であるうちに、家族に疎まれないうちに、逝きたい。

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