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【読書記録】学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか

おすすめ度 ★★★★★

期待を上回って素晴らしい本だった。
教育論や学校論の本は、数年前に何冊か読んだことがあり、だいぶわかっているつもりでいたが、それでも目からウロコがポロポロでて、さらにひとウロコ向けた気がする。これは紙で購入し直そう。

鴻上尚史さんの人生相談も好きだし、工藤勇一さんが元校長をしていた麹町中学校にも関心があった。その二人の対談なので、面白くないわけがない。
学校や教育論を超えて、先生と生徒の関係はそのまま親子にも適用できるし、広い目で見れば未来の日本も論じている。ミクロにもマクロにも通用する話になっている。


優先度を考える

麹町中学校は、校則や宿題を撤廃した学校として有名だ。さぞかし革新的な方なのだろうと思ったが、工藤さんは徹底して対話を重視し、論理的で冷静な印象を受けた。
例えば、校則の廃止に向けて、教員との対話につかった13の優先順位リスト。厳しく指導しなければいけない13の事例を並べて、みんなで優先順位を考える。

内容は、「コンビニで万引きをした」「学校にお菓子を持ち込みした」「4階の教室のベランダの柵にまたがって遊んだ」「障害のある生徒をバカにした」「違反する服装で登校した」など。

この中で優先するものを話し合っていくと、まず最優先すべきは子供の命に関わること、そして犯罪や差別にかかわること…などと優先順位をつけていく。服装の違反なんてどうでもよくない?という結論に自然となるという。
確かに「命よりも服装違反がダメ!」なんていう人いないもんね。

多様性はしんどい

対談の中で何度も出てきたのが、「多様性はしんどい」という話。
教育現場でよく言われる「絆」「心を一つに」という言葉には無理がある、多様性があれば対立や問題が生まれるのは当然で、それにどう対処するか、他人を尊重しつつ自分を守る術を教えるのが教育だという。
本当にそのとおりだと思う。以前読んだブレイディみかこさんの本にも「多様性なんてめんどくさいけど、無くすと無知になる」という話があった。
めちゃ好き。

ちなみに、対談中にもブレイディさんの話題やイギリスの教育話がでてくる。根底がつながっていて面白い。

社会を変えられると思えない日本人

ショックを受けたのは、世界9カ国で行った意識調査で「国や社会を変えられると思う」と答えた17〜19歳のデータ。
日本はダントツに低く、18.3%しかない。ワースト2位の韓国39.6%の半分以下だ。社会課題の認知度や、大人の自覚など、他のデータもずば抜けて低い。海外の調査ではなく、日本財団が行っている調査(2019年)だ。

この結果はそのまま大人にも当てはまると思う。投票率の低さは明らかだし、自分自身を顧みても反省すべき点が多い。
社会に対する当事者意識のなさは、学校教育で「当事者意識を持って物事を話し合う・決める」という体験の少なさからくるという話があった。
とても合点がいく。

学校に期待できないなら、家庭で

私は、正直あまり日本の学校教育に期待していない。日本の教員はありえないほど忙しい中で努力しているが、その努力に甘えて負担を押し付ける教育システムにも、文科省の動きの遅さにも、財務省のケチ臭さを思うとイライラする。
だから、この本に書かれている教育は理想的だけれど、「先生から生徒に」を期待するよりも「親から子に」実践したほうが効果があるんじゃないかと思う。というわけで、我が家で実現したいことを書く。

・感情と言動をコントロールできるようにする(好き嫌いがあるのは仕方ないけど、相手を尊重した言動が取れるようにする)
・考え方の対立を、感情の対立と混同しない(考え方が違うのは当たり前)
・対話を通して、落とし所を見つける(優先すべきことはなにか、本質を探る)

書いていて思ったが、まず私ができていない。すぐ怒るし、話し合いも下手だ。実践…努力…!

理不尽に慣れさせるのは、教育じゃない

一冊通して、興奮するほど同意できる内容ばかりで、読んだあとに工藤勇一さんのSNSや記事を読み漁った。(Web記事は工藤さんの人柄を「改革断行!反発上等!」みたいに印象操作してるものもあったので、本人の考えを知るって大事やなと思う)
その中で、すごく刺さる言葉があったので紹介する。

「理不尽に慣れる場を与えるのも教育」という言葉は、現役の教員から実際に聞いたことがある。絶対に違うと思う。

そんなのは理不尽を正せない大人の言い訳だ。
少しでも良い世の中を残すために考え抜いて行動するのが、大人のはずだ。
頑張ろ。

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