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引き戸。日本建築の極み。

そう。引き戸のこと。なんで引き戸ごときで、こんなに書けるのかって思うかもしれないけど、まとめて書いておきたい。

このパン屋のドア。私がドアと格闘している時、母は数歩後ろに立っていたのだが、そのさらに後ろを人が通りながら、私の様子を不思議そうに見ていたそうだ。でも日本人だから「こうやって開けるんですよ」と他人に声をかけることはせず、そのまま通り過ぎて。でも気になっていたみたいで、振り返った瞬間に私が無事にドアを開けたらしい。

と、その夜、母がまたおかしそうに父に話していた。

さて。
引き戸には、千葉の幕張温泉施設でも悩まされた。

さて。お風呂るんるん。身体を洗って、炭酸風呂なんかにつかって小さな泡が体中にくっついて楽しい。次は露天風呂。

そしたら。外に出ようとしたら、目の前に「半自動ドア」。ドアの前に立ってるのに開かない。は?「半自動」って?私は凍った。

どの半分が自動なのかがわからない。

ご丁寧に「自動的に閉まります」みたいなことが書いてあったようなのだが、パニクってる私にはこの文章が読解できない。

素っ裸のまま「半自動」の文字を眺めながら、しばらく立ちすくんで考えた。ドアの向こうには憧れの露天風呂が。

そして、わかった。

あああああ。自動に開くんじゃなくて、手動で開けて、自動に閉まるんだわ!!だから、半自動!ああああああ。

露天風呂につかりながら、人目を避けて、くくく….としばらく笑っていたのは言うまでもない。

これは施設内にあったトイレへのドア。

半自動ドア。なんて賢い発明なんだろう。ピタリと閉めない人がいると困る場所に使っている。露天風呂へのドアがきちんと閉まってなかったら、外の冷たい空気が中に入ってくる。トイレのドアがきちんと閉まってなかったら、臭いかもしれなし、身繕いをしている人は外から見られたら嫌だろう。

日本家屋は、襖をはじめ引き戸がたくさんある。

四年前の真夏、実家に帰った時、各部屋冷房に直面した。ちょっと立ってトイレにいくとか台所にいくとか、いちいち引き戸を開けて閉めることになる。日本は光熱費が膨大に高いのだから開けっ放しにするな、と口を酸っぱくしてムスコに教えた。これは冬も同じ。冷暖房は各部屋ごとに備え付けてあるユニット。

アメリカ住宅には、引き戸はない。あるとしたら、クローゼットのドアくらいで、部屋と部屋との区切りには使われていない。

そして。ドアは「個室」についてるだけで、リビングやキッチンなどの共有空間はドアでは仕切られていないし、全館冷暖房式。セントラル・ヒーティング。つまり天井や床や壁にいくつもの通風口があって、(冷温)風がでてくる通風口と、部屋の空気を循環させるために「吸い取る」通風口がある。

Thermostat(自動温度調節装置)が一つしかない家や、私が前住んでいた家のように地下と一階と二階にそれぞれ一つずつあることもある。複数あれば各階ごとに温度調整が別々にできる。私の今のアパートの居住空間は二階分にわたっているが、Thermostatは一階にしかないので、夏は二階のほうが一階よりも暑くなって(温かい空気は上へ上へと昇るのに、一階のThermostatが感じる空気は「涼しい」まま)だから二階にいた暑がりのムスメと一階にいた寒がりの私とでいつも温度調整でケンカしていた。

だから。家の外にさえ出なければ、どんな猛暑でも厳寒でも関係ない。
真夏と真冬の間は絶対にアメリカで過ごすと決めている。

空気が家の中で循環する仕組み。
Thermostat により空気は循環して設定した室温を保つ。

がらがらがら、と引き戸を開けて閉めて空気を閉じ込める。空間を仕切る。ドアを開けることによって生じる dead space が生じない。限られたスペースの最大利用である。

確かに。アメリカの広大な土地に家を建てるとき、そんなことを考える必要はないだろう。離婚した私が一人で売り払った家は、家が500平米。土地は2000平米近い。車庫は3台分。

表玄関を入ると、一階はダイニングとリビングとファミリールームとキッチンとがすべて一切の仕切りなしにつながっていた。例外はトイレだけ。
二階は5部屋でバスルーム3つ。すべてドアでそれぞれが仕切られている。

今住んでいるアパートは Duplex 風で、一台分のガレージと収納があるのが地下、その上が玄関とコートクローゼットだけ。もう一階あがるとリビング・ダイニング・キッチンとトイレ。一番上が2部屋とバスルーム2つ。130平米。これが2LDKのサイズ。

….よくもまぁ、こんな国に戦争しかけたもんだ。驕りと勘違い以外の何モノでもない。でも、私は真珠湾攻撃成功はさすが我らが日本人だと思っている。

ニイタカヤマノボレ、トラトラトラ。

日本で、母と見学した2LDKのモデルルームは60平米。

日本建築の極み。引き戸。

フジサンノボレ、ガラガラガラ。


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。