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音楽の授業づくりで大切にしていること。

 私は現在、知的障がいのある子どもたちのための特別支援学校で働いており、中学部のお子さんたちと毎日楽しく過ごしています。私が勤める学校には自閉症スペクトラムや染色体異常の障害のある子たちが多く在籍しています。このような子どもたちにとって、学習内容がわかりやすく、主体的に活動できるために日々の授業で大切にしていることを書いていきます。

①視覚的にわかりやすく示す。

 座る位置、学習内容、学習量、器楽演奏の際のスキル面のサポート等を視覚的にわかりやすく示すことで、生徒の見通しや安心感につながり、授業場面で持っている力を発揮しやすくなると考えています。
 座る位置に関しては、学習で使用するパワーポイントで示し、音楽室に入ってきたら自分がどこに座るのかを示すのと同時に個別の写真カードを机(または椅子)に置いておき、画面を見ただけでは自分の座席を理解することが難しい子にもわかるようにしています。自分の座席が決まっていることで自分の居場所がはっきりするので、離席してしまう子どもが戻ってきやすい環境となると考えています。
 また、合奏や歌唱の授業内容もこの曲を何回やりますと視覚的に(私はイラストで示しています)伝えてあげることで、授業内容に見通しがもてて生徒たちの安心感につながります。

②学習場所、曜日、内容、担当教員を固定。

 〇曜日の音楽はこの場所でこの内容、〇曜日の音楽はこの場所でこの内容と固定することで上記と同様、生徒の見通し、安心感につながると考えています。行事の影響で授業時数にばらつきが出てしまうこともありますが、イレギュラーなことは極力避けるようにしています。

③音楽を用いた行動の構造化(ストレッチ、リトミック、ダンス)

 音楽に合わせた動きを固定化し、繰り返すことで、言葉での指示よりも理解しやすく、「この音楽の時はこの動きをすればよい」という理解につながると考えています。

④言葉による指示は最低限にする。

 自閉症の生徒や知的障がいのある生徒は言葉による情報処理が苦手な子が多いです。言葉での指示が多くなりすぎると、情報が多すぎて混乱につながると考えています。①にも重なることですが、視覚的にわかりやすい環境にしながら言葉での指示が最低限となるよう、意識しています。

⑤待ち時間を減らし、活動量を確保する。

 特別支援学校での音楽の授業では、数名ずつ前に出て順番に楽器を演奏する展開の授業パターンが多い印象があります。この形は一つのやり方ではありますが、集団が大きくなるとどうしても待ち時間が多くなってしまいます。
 そこで、約束を守ることを徹底して1人に付き1台の楽器を用意し、全員で一斉に演奏する時間を確保することで、「楽器に触りたい」欲を満たし、待ち時間を減らすことができます。生徒によっては待ち時間があることで気持ちが不安定になったり、不適応な行動につながったりする場合があるので、待ち時間を極力少なくした授業をしたいと考えています。

⑥トレーニング的な要素を入れる。

 学習を進める際に、子どもたちが持っている力以上のものを求めると「できない、面白くない、やりたくない」の気持ちにつながってしまうことがあります。学習の導入場面では生徒が持っている力の8割程度で行える楽しい活動をたくさん用意し、生徒が飽きる前にどんどんと進めていくことも必要です。
 しかし、中学生や高校生くらいになると、課題にじっくり取り組む力がついてきている様子が伺えるので、はじめは難しいことでも練習を重ねることで「できるようになった!」の達成感が感じられる要素も取り入れて授業を行っています。私の授業では、まずは全員で同じ音での合奏や合唱を行い、その旋律ができるようになった子どもには個別に楽譜を用意してその子に応じた難易度で授業を進めています。

⑦個々の実態に応じた目標、内容、手立ての調整。

 私の授業では1学年を2つのグループに分け、20人弱の集団での授業を行っています。1対20の授業ではなく、1対1×20のイメージで授業を行うことを意識しています。授業自体は一斉授業で同じことをしていますが、一人一人の生徒に求める目標も学習内容も異なるので、手立てを工夫してそれぞれに合った指導ができるよう、MTとSTで連携することを意識しています。⑥の内容とも少し重なりますが、一人一人の生徒にオーダーメイドの指導を行える授業をしたいと考えています。

⑧生徒の生活年齢に合った教材を用意する。

 中学部になると、生徒の発達年齢(1,2歳~7歳くらい)と生活年齢の差が大きくなってきます。アンパンマンやおかあさんといっしょが好きな生徒は多いですが、教材として扱う楽曲は生活年齢にふさわしいものを選び、個々の発達段階に応じたスキルで学習できる配慮を行っています。


まとめ

 上記にポイントとして書かせていただいたことは、当たり前のことばかりなので、目新しいことはないかもしれませんが、ひとつでもなるほどと思えるポイントがあれば幸いです。
 子どもたちの学習環境を整え、見通しをもってわかりやすい授業を行うことで生徒たちのもっている力を引き出せるよう、これからも試行錯誤を重ねてよりよい授業を行っていきたいと考えています。
 今後は時間のある時に授業で使用したパワーポイント教材や楽譜、伴奏音源をアップしていこうと考えておりますので、使えそうな教材があれば、ぜひ取り入れて下さい。

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