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書評「へんな会社」のつくり方-常識にとらわれない「はてな」の超オープン経営術-」

糸井重里の「インターネット的」という本にはインターネット的なものを表現する軸として「リンク」「シェア」「フラット」という3つが紹介されている。「インターネット的」に新たなゴールドラッシュを予感した人もいたと思うが、自由を得る手段と捉えた人もいたのではないかと思う。僕もそんな一人だった。

あれから20年ほど経過し、インターネットは想像以上にゴールドをもたらしたかもしれないけど、得られるはずだった自由はそこまでではないのではと思い始め、気がつくとSNSやnoteでの情報発信頻度も減っていった。

僕がインターネットの世界に飛び込んだ2006年頃にインターネットがもたらす自由を表現していたのが「はてな」だった。はてなダイアリー、はてなフォト、はてなブックマーク、はてなアンテナといったサービスもだが、何よりサービスを運営する会社がそもそも独特だった。

会議は立ったまま、毎日が席替え、会社の会議をポッドキャストで配信しユーザーにも会議に参加してもらう、50%の完成度でサービスを利用する、などなど「リンク」「シェア」「フラット」という「インターネット的」な考え方を取り入れた会社の手法は、後に多くの会社が真似し、今では当たり前になっている手法も多い。ただ、本当に真似しなければならなかったのは、はてなが当時提唱した「リンク」「シェア」「フラット」という「インターネット的」な考え方であり、その考え方を徹底的に実行する実行力ではなかったのかと思う。

はてなは「はてな村」と表現されるように、ユーザーとの距離が近いのが特徴だ。ユーザーをユーザーと分けず、共犯関係を作るような関係性にこそ、はてなの面白さや先進性があったのではないか。

そして、そんなはてなの面白さや先進性を形作った創始者の近藤淳也は現在物件紹介サイト「物件ファン」を運営するだけでなく、京都五條楽園にあるコワーキングスペース「UNKNOWN KYOTO」やトレイルランやアウトドアのGPSトラッキングサービス「IBUKI」といったサービスを提供している。「LISTEN」というポッドキャストサービスも始めた。

どのサービスも「リンク」「シェア」「フラット」といった「インターネット的」な考えに基づいていて、とてもおもしろいし、リアルに人とコミュニケーションできたり、あまり人がやったことない領域のサービスに取り組んでいるのも嬉しい。はてなやっていた頃の近藤淳也は、今でも近藤淳也なのだととても嬉しくなった。「近藤淳也のUNKNOWN RADIO」も面白いのでおすすめ。

最近のインターネットの企業として話題な企業が取り組んでいることを調べていて、サービスはとても便利だし共感しつつも、「僕が希望をもったインターネットってこうだっけ?」ということを考えたくなって、2006年に出版された「へんな会社」のつくり方-常識にとらわれない「はてな」の超オープン経営術-」を読んでみました。面白かったです。


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