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【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Wet Sand」Red Hot Chili Peppers
肌寒い海辺で砂の城を作るふたり、恋人の関係。同性同士だから男性でも女性でも関係ない。ただひとりはオワリで、もうひとりはエイエン。ズブズブに海水に浸ったスニーカーが変色。太陽は真上にあり、人生を照らす。
「多様性って何かな」
「ぼくたち、わたしたちには、知らないことだよ」
ディレイして海面で蒸発する言葉。波打つ海は永遠に思える。
「今、この瞬間も若さを失っている」
「永遠なんてないんだ」
関
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Trark1」Regurgitator
飲み会の乾杯挨拶を急にフラれて戸惑った。でも、そこは演劇の経験を生かして、平静を装う観音。「カート・コバーンが亡くなってから30年の時が経ちました。わたしはまだ生まれていませんでした」と言い始めても、誰も顔をしかめるような人はいなかった。観音は続ける。
「でも、カート・コバーンが生まれる前からこの会社はあります。それはどういうことかわかりますか?」
そこで「んん?」と顔を歪ます人たちが出だす。
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「When Doves Cry」プリンス
寺の境内で鳩がギャーテーギャーテーうるさい。守は地面を徘徊する鳩の群れに突っ込んでいって、彼らを曇り空へぶっ飛ばした。「ダメだよ、そんなことしちゃ、小学生かよ!」と里穂が頬を膨らませて、プンプン怒り出す。「男はいつまでも子どもなんだよ」と在り来たりのことを守は言い出す。六体の地蔵の前に敷き詰められた砂利の大きめな石を蹴り散らかす、落ち着かない。
「鳩って本当はどう鳴くか知ってる?」と変化球で里穂
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】 「No Success」Atari Teenage Riot
酒野麹は自分らしさとは何かを追求している。ペンネームが表すようにユーモアのセンスがあるとは言えない真面目なタイプ。人には信頼されるが重宝はされない。助けた人はたくさんいるけれど、その割にSNSのフォロワー数が伸びない。誰にでも「いい人だよね」と一言で片付けられてしまうのは、よくある例。「自分らしさをください」と神様に祈っているようだから、まだまだ甘い。ただ在るだけでいいのに、自分らしさを求めるから
もっとみる【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「夏の日の午後」eastern youth
いずれやって来る死。罪は溶けない。背中に晒して生きていくしかない。誰もが前科者。
そんな達観した考えに10歳で到達してしまって、久仁は苦しかった。生きづらいと言語化できたら少しは楽だっただろう。生きたくないというのが久仁の本音。でも自決する勇気など持ててしまえるほど、神様は残酷ではなかった。学校に行くのが苦しかった。でも、親を心配させたくなかったから、普通でいた。誰にもそうであるように、小学校の
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「自問自答」ZAZEN BOYS
《人として好き》が先なのか、《動物としての好き》が先だったのか。
「性欲に惑わされるようじゃ、まだまだわたしは弱い人間ね」とメグミは自ら寂しいと認めた。
「ムカイくんって色気もあるよね」
「あんなにボーッとしてるのに」
メグミがムカイと寝たのは4日前のことで、酔っ払った勢いで「うち来る?」と彼女は言い放って、それからは大人の男女の流れに則って。とても精神が癒されたひと時であったが、親しくもな
【400字小説】祝福が黄色
踏み切り前でプロポーズして良かった。
あなたに出会えて嬉しかった。
あなたを泣かせてすみませんでした。
ずっとね、謝っていたんだよ。
わたしの過ちは許されない。
佐々木希よりも神々しい
あなたの対応に頭が上がらない。
こんな平凡な単語を並べることしかできない。
それでもあなたのわたしへの失望感に比べたら、
指の爪を剥がされたくらいの苦痛で。
あなたの心臓を握り潰そうとしたんだから。
嘘はいけ
【400字小説】鎖に繋がれた自由
不自由の中に自由があるってよく言うけれど、
実際のところ意味がわからない。
急に駐車場で車の窓をコツコツされて
嫌なあなたが立っていたのに辟易した。
そんなことお構いなしに喋り出すから、
仕方なく窓を開けていた。
無視したって良かった気もする。
嫌いな人には関わらない自分になりたかったんだ。
それが自由な気がしているからさ。
「STAY DREAMいいよ」って
長渕剛の曲を押し付けてきて、うざか
【400字小説】わたしに執着していない
「自分らしさを追求するってさ、
まだまだだね、きみは」
カチンと来た。
あれ以来、LINEのやりとりは
していない、1年以上。
何度か最後のLINEを開くことはあって、
ブロックされていないから
本当に関係が断ち切れたわけではないと、ホッとしている。
悪かったのはわたしかもって思うことがあって、
「自分も他人もなくて、あるがままに居るだけ」
という悟りのような考えに
少しは理解を示せるようにな