蕎麦をすすって優しさを感じた
気が参っている私を見かねた母が
外へご飯食べに行こう、と声をかけてくれた。
何度かご飯食べに行かないかと誘ってくれてはいたのだけれど、うぅん…と浮かない返答をしていた。
でも今日は、あまりにも気が滅入り過ぎていて
逆に今外に出なければ、このチャンスを逃せば、私は一生、外へ抜け出せないのではないかという強迫観念に襲われていた。
行く…と答えると、何が食べたい?と尋ねてくれた母。
私は「食べる」ということになると、ものすごく考えるのに時間がかかる。何が食べたいかよりも、自分の中の食べてはいけないもの(罪悪感のあるもの)を避けられる方法ばかり探す。
自分の意志よりも、なるべく太らないものを優先してしまう癖がある。
しかし今日は早く決断できた。
「蕎麦が食べたい…」
大好物である蕎麦。何か季節を感じられて、黙々と口に運べるものが食べたかった。
母も、うん、いいね。と賛同してくれた。
恥ずかしいことに、先週、投票に行ったぶりに外出した。家の周りの雑草が、この頃の雨と激しい日照りのおかげか、やたら伸びて私の身長ほどになっていて驚いた。
そんなに外に出てなかったか…と思いながら、母の車に乗り込んだ。
地元でも美味しいと有名で、昼時ともなると満員になる蕎麦屋に着くと、予想に反して一番乗りであった。
人気店の閑散さを味わうこともなかなかないと思ったのも束の間、後から次々とお客さんが入ってきた。
「いっぱいになるき、早く注文しよう。」
と、2人でメニュー表を吟味し、母は天おろし蕎麦、私はとろろ蕎麦を注文した。
待つ間のジッとした時間、母はきっと私の気分のこと、体調のことを聞いてくるのだろうと思っていたのだが、そんなことはなく、これからある花火大会やお祭りの話をニコニコしながらしてくれた。
あぁ、この人に気を遣わせているなぁ。私を楽しませよう、別のことを考えるようにとしてくれているなぁ。と謝りたくなった。
注文した蕎麦が到着すると、2人同時に
「うわぁ〜」と、声をもらしてしまった。
私がとろろに蕎麦つゆを混ぜ、ネギとわさびを入れてよく馴染ませている間に、母は既に天ぷらと蕎麦をすすっていた。
「美味しい…!これ、絶対あんたも好きなやつよ。」と、母が言う。私と母の味覚はよく合う。これは期待できる、と、私も早速蕎麦にとろろを絡める。
「美味しい!分かる、確かにこれ好き!」
久しぶりに母と美味しさを共有した。1人で悩みながら、罪悪感に襲われながら食べるご飯とは全然違う。夢中で食べ進めた。
美味しかったからと言うのもあるだろうが、蕎麦というのはズルズルと集中して食べてしまうものだなぁと感じた。その間は何も考えずにスルスルと口に運べる。
夏ならザル、冬なら汁で季節を感じられるのもいい。日本食って、1つの食材を食べ方で風味を変え、季節感を感じさせる最高の文化だ。
いつしか2人とも食べ終わり、蕎麦湯をすすった後は、混み合ってきた店内を見渡してホッとする間もなく、お会計を済ませた。
母にありがとうと声をかけると、
「あんたが機嫌が良くて明るくいてくれるのが一番嬉しいや、こちらこそありがとう。」と逆に感謝された。
この人ほど、さりげない優しさを発せられる人はいないと思った。私は、いつこの人のような優しい女性になれるのだろうか。
今日は、蕎麦をすするのに絶好の日だったのだろう。
また食べに行こうね、必ずね。
読んで頂きありがとうございました! まだまだ初心者ですが、色んなことを書いていきたいと 思います! ぜひあなたのnoteも勉強にさせて頂きたいです〜🌹