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十六夜文庫という場所

 私の祖父母の家には、生活としての家のほかにもう一つ平屋があった。その家にはそこら中所狭しとあらゆる本が置いてあった。夏休みなどは、そこで一日中本を読んで過ごした。小さいときの記憶は、読んだ本のことばかり。自分の知らない世界のことを知ることが楽しかった。

その平屋は『十六夜文庫(いざよいぶんこ)』という。

曾祖父が作った私設図書館だ。
ちなみに今は―——もう形を残していない。



 プレイングワーカー、という素敵な言葉を教えてもらった。
プロサッカー選手という期間限定の仕事と、その先の人生も見据えた仕事・活動の両立をする人。その人は、選手として一流の活動をしながら、様々な資格を取ったり社会人として職場経験を積んでいた。
「これは全部やりたいことのためのツールなんです」という。
二刀流、なんて聞こえはいいけれど、これを体現している人がいるのは本当にすごいと思う。

プレイングワーカー、この言葉が私の夢に輪郭を与えた。


子どもたちの引き出しのための場をつくりたい。

 それは学校でも家でも塾でもない。自分がこれから生きる社会で、夢のヒント、人生の選択肢が見える場所。興味がなければ「教える」ことには限界がある。学ばず知らないことは恥ではないが、人に無用の恐怖を生む。その無用の恐怖は差別や偏見を簡単に作ってしまう。

 自分の「やりたいこと」「好きなこと」「学びたいこと」「得意なこと」「楽しいと思うこと」が経験できたり、実際に「興味のあること」の世界で生きている人と直接話をしたら。

 「支援級のなんか怖いあの子」と一緒に本を読んだり、昨日の晩ごはんの話をしたら。

 どんな子どもも関係なく、この場所でのつながりが、世界(可能性)を広げていくんじゃないだろうか。そして、その先に自分が自分の選択で生きられる平等な社会ができるんじゃないだろうか。
 もっと、自然に、本をぱらっとめくるように、世界が広がってほしい。

子どもといろんな世界(お話)をつなぐ場所。
十六夜文庫、再建します。

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