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あなたのままで、素直に生きる。琴と手話歌が、連れ戻してくれた時間。

はじめてかもしれない、こんなにも感情を乗せた演奏をきくのは。
まだ何も書いていないのに、あの時を思い出しただけで、涙が出そうになっている。

先日、"箏と手話歌 チャリティーコンサート"に参加し、すばらしい演奏を鑑賞してきた。厳密に言えば、ドキュメンタリーを撮るための密着取材をさせていただいた。

それはそれはとてもいい時間だった。お琴の演奏にあわせて、手話と、詩と、そして表情が、音楽に彩りをうみ出していた。いい曲だな、ではなくて、どれも「すきだ」と感じていた。


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出演者はおふたり。
一人目は、琴演奏者の大川義秋(おおかわ よしあき)さん。

確認:大川さんのインスタより引用

大川さんは、天真爛漫でみんなからの愛されキャラだなぁと思った。でもわたしはそれ以上に、優しい光の中にある、意志をもった目に惹かれて。

そんな人の手からでる音色は、暖かみを感じながらも、どこか存在がどっしりとしている。ご自身は福島県双葉町を出身、東日本大震災の後に出会った琴で新しい道を切り開いてきたそうだ。詳細は、また今度にゆっくり。

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二人目は、手話歌をしてくださった、俳優のもとみち(通称:もっくん)さん。

確認:もとみちさんのstand.famより引用

もとみちさんも同じく、撮影中、初対面とは思えない気さくさで話かけてくださった。大切な人を温かく見守るようで、無垢な瞳が印象的だった。

嬉しさ、楽しさ、悲しみ、寂しさ。
いろんな感情を乗せて手話歌をする姿に、自分に正直に生きている彼だからこそ、生み出される表現なんだと思った。

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コンサート前は緊張している様子よりも、これからの時間・空間が楽しみだというふたりのワクワク。とっても素敵だ。

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何時間も前から楽しみに待つファンもいる中、会場がオープンして、あっという間に席は埋まった。
本番は、それぞれのソロパートとコラボするパートがあった。

大川さんは、世間一般的な和楽器のイメージを覆すような、アニメや流行りのポップな曲から、ご自身が作曲した曲まで、一つのジャンルに留まらない。
誰かの評価ではなく、自分の好きな音楽を届けている。そんなのびのびとした姿に、惹かれていくんだと思う。

「時の風にのって」は、東日本大震災を作曲し、誰かの背中をそっと押してあげるような風をイメージして作ったそう。どこか切なさも感じながら、流れるような旋律は、心を癒してくれる希望そのものだった。

大川さんは演奏中、ずっと穏やかな表情だった。いろんな決断を積み重ねていく中で、今の大川さんがあり、あのとき話していた言葉はこれからも変化していくのだろうか。彼の原体験と重ねた音楽を聴いて、そんなことが頭に浮かんだ。

そして、大川さんの人懐こい性格は、みんなを笑顔にする魔法だと思った。ステージ上ではもちろんアーティストだけど、ファン一人ひとりとの距離がとても近い。(これは虜になってしまう…笑) 

きっとそれは、大川さんが人の繋がりを大切にして、支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れないからだろう。そう思えるような温かな空間が、会場を包み込む。

もとみちさんも、とある原体験から手話を始めたという。

大切な人に向けた曲、「僕のこと / Mrs. GREEN APPLE」の手話歌の感動は、言葉に表せない。わたしは撮影者だから、泣いてはいけないと思って深呼吸をしたのに、まるで押して跳ね返るポンプのように、かえって涙が溢れた。音楽が彼に話しかけているみたいで、わたしたちには聞こえない音があるんじゃないかと思ってしまうほどに。

ああなんて素敵な日だ。歌詞の通り、そう思ってしまった。

”手話は手の動きや表情(口話を含む)を使う視覚言語”という言葉が、すごく心に残った。これまで手話は“聾の方だけが使うもの“と思っていたのに、あぁそうか、手話は手を使った“言葉“であり、そこに境界線はないんだ。もとみちさんがお客さんと手話の架け橋になり、確実に手話との距離が縮まっていた。

自分の活動を通して、たくさんの方の明日を豊かにしたい。
手話を取り入れたエンターテイメントを通して、手話に触れる機会をつくりたい。

この二つを実現するために、もとみちさんは今を駆け抜けていた。

最後のふたりの演奏も、とても良かった。琴の演奏に、もとみちさんが大川さんが作った詩を朗読し、手話で表現する。
なんだか、空一面に星が煌めくようだなぁと思ったんだ。(多分、地球や惑星という言葉があった気がする。)

ふたりの表現はとても豊かだった。
こんなにも感情を乗せた演奏をきくのは初めてかもしれないと思った。

単純に音楽を聴いているというより、まるで共に感情を分かち合ったり、ふたりの経験・生き方を共有しているようだった。

自分の心を大切にして、まっすぐに進むふたり。

人生には、いろんな生き方があっていい。
なんだか、素直に生きることを肯定してもらえるような、そんな時間だったなと思う。

前向きなエネルギーから生まれてくる何かは、それを受け取る人にも届くのだろう。これからも、間違いなく応援していきたい。

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あとがき / Writer 南條 佑佳
あの時の感情を忘れたくなくて、
魅力をたくさんの人に知ってほしくて、
おふたりに送る長い手紙のように、残したい。

筆者の主観がほとんどですが、時を戻して、スローモーションであの時を振り返って、こうして言葉を綴れて良かったです。

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