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【ウソはすぐバレるよ?】CMOが欲しいスカウトメール、自分で書いてみた

皆さんは転職サイトに登録しているだろうか?自分はもっぱらビズリーチ派で、転職意思がある時もない時も、できるだけ職務経歴書を更新し、興味のあるスカウトがあれば面談している(最近はビズリーチも転職意向前の登録をCMで訴求している)。

年中スカウトメールを受け取っていると、あっという間に通数が3桁を超えてくる。どれも必ず熟読するようにしているのだが、もっとこう書いてよ!というモヤモヤがだんだん大きくなってきた。なので今回は、顧客(受信者)の立場から「自分が嬉しいスカウトメール」と、そのポイントを書いてみた。


自分が欲しいスカウトメール

※業種は適当、企業名はダミー

名無しのCMO様

お世話になっております。株式会社わっしょいブルーイング、代表取締役の鷲尾と申します。名無しのCMO様のご経歴が、あまりに弊社の求めているCMO像にピッタリだったため、いても立ってもいられず、代表自ら連絡を差し上げました。

名無しのCMO様、ビールはお好きでしょうか?当社は「クラフトビールで世界を酔わす」をビジョンに掲げ、主力商品「わっしょいエール」をはじめとする30商品を市場投入しています。このたび新たに10億円の資金を調達し、マーケティングを強化するにあたり、その中核を担うCMOを募集しています。
なお、ここでいう「マーケティング」とは商品企画を含め、顧客増・ファン増のための取り組み全般を指します。

クラフトビール市場は中小ブランドが群雄割拠しており、消費者の趣味嗜好も多様化する中で「頭一つ抜け出す」ことが非常に難しい状況です。そのため、マスに支持されるブランドを確立し、広く効率的に情報をデリバリーすることが、当社の喫緊の事業課題です。

その点、名無しのCMO様はマス広告を含めたブランドコミュニケーションの設計・実行に強みを持ち、当社のような拡大期のベンチャーで実績を挙げておられます。ぜひ当社に参画いただけないでしょうか?

CMOの期待役割は上述の課題を解決のための商品企画、プライシング、プレイスメント、プロモーションを貫くマーケティング戦略の策定と実行です。そのために、CMOには事業戦略部、商品企画部、プロモーション部を管轄いただきます。開発部、営業部は管轄外となりますが、CMOの策定したマーケティング方針に従って活動します。

少しでも興味を持っていただけるようであれば、一度お話ししましょう。希望であれば飲みながらでも結構です。お返事お待ちしております。

鷲尾

ポイント① 人間味のある文体にしてほしい

まずはじめに、採用担当の方には「人間味のあるスカウトはメールボックスで光り輝く」という事実を明確にお伝えしたい。顔の見えない「会社」が主語のメールがどれだけ多いことか。

単に誰か社員の名前を名乗ればいいわけではなく、自分を見込んでスカウトをくれた人の熱意を知りたい。個人的には、「会社はどうかわかりませんが、僕があなたをほしいんです!」くらいのスタンスを見せてもらえれば、8割増しくらい好意的にレスポンスしたくなる

ちなみに、メールで名乗る名前は、代表でも採用担当の平社員でも、個人的にはあまり関係がない。大切なのは自分に興味を持ってくれた本人が、本人なりの言葉で熱意を伝えてくれることだと思う。当たり前のようで、これをやっている企業はほとんどいない。

なお、誰が発明したのか、「代表が書いていないのに代表を名乗るメール」が横行しているが、割とぱっと見でわかってしまうので、ウソをつくのはやめた方が良い。見抜けていないものもあるとは思うが、我々は職業柄、マーケティング的なウソにとても敏感だ。

返事をすればちゃんと代表と面談できるので返信することもあるが、メールでウソをついたこと自体はマイナスに評価している。マーケターでもない採用担当の小手先のテクニックなど、通用しないと思ってもらった方が良い。互いに誠実であることが一番だ。

ポイント② 「マーケティング」の定義を明記してほしい

「マーケティング」という言葉はとてもふんわりしていて、企業によって定義が全く違っている(toCとtoBでも全然違うし)。求人票を読めば汲み取れる部分もあるのだが、その企業が何をもって「マーケティング」とするのか、はっきり書いてもらえるとありがたい

マーケターはその企業の「マーケティング観」をとても重視している。これは採用する側としての感覚になるが、マーケティングへの理解が乏しい企業を警戒しているマーケターが多いように思う。

一般的には、会社全体の売上責任を負い、部門を跨いでダイナミックにマーケティングを実行できる環境が、マーケターにとって嬉しい環境だろう。

逆に、マーケターにとって一番怖いのは、転職前よりも狭いマーケティング観に閉じ込められてしまうことだ。他部門の協力が得られにくかったり、権限が小さかったり、ギャップに苦しんで早期退職するマーケターを何人も見てきた。

ポイント③マーケティングの課題と期待役割を書いてほしい

メールに添付されている求人票も含め、その会社のマーケティングの課題や状況がわからないスカウトが体感で3割くらいある。CMOを採用したいのはそれなりの理由があるはずなので、それがわからないとモヤモヤする。

スカウトに返事をするには、この募集には自分がハマるかも?という興味が必要になる。そしてそのためには、その企業がどういう課題に直面していて、自分に何を期待しているのかを知る必要がある

CMOがいない=マーケティング全体を俯瞰できる人がいないということなので、うまく言語化できないケースもきっとあると思う。しかし、課題を言語化できない企業の求人はどうしてもピンとこないし、何をやらされるかわからない感じが怖い

ちなみに、そういうスカウトに限って、なぜか欲しい人材のスキルセットが無数に箇条書きされていることが多い。
そんなスーパーマンどこにおるんや・・・と思って、「僕そんなスーパーマンじゃないですよ」と返信したら「とりあえず書いただけなので気にしないでください」みたいな返事が来たこともある。怖い。

ポイント④ 自分の経歴がなぜ良いのか、具体的に書いてほしい

「あなたの経歴をちゃんと読みましたよ」感を出すために、「あなたの(社名)での経歴を拝見して、ぜひ当社に〜」という表現が横行しているが、とってつけた感が否めない。あまりにみんな同じ文言を送ってくるので、自分としては信頼できない言葉になってしまった。

ちなみに以前、実験的に「(キーワード)を書いてくれれば必ず返事を差し上げます」とプロフィールの隅っこに記載したことがある。我ながら性格が悪かったが、記載に気づいてくれたスカウトは1割に満たず、いかにみんな「数うちゃ当たる方式」なのかを確認できた

つまり、採用する側は「経歴書をちゃんと読む」という当たり前のことが、実は大きな差別優位性になる。「採用マーケティング」とかいう、訳のわからん汎用メソッドのせいで、採用の本質が失われていると感じた。

だからこそ、本当にきちんと読んでくれているのなら、求めるポジションと自分の経歴がどこでマッチしているのか、具体的に書いてほしい。たとえ的を射ていなくても、ちゃんと読んでくれた誠意は伝わる。それが嬉しいのだ。

「定型文」でも別にいい

最後に補足しておきたいのだが、自分は定型化されたスカウトメールを否定するつもりはない。全員にユニークな文章を送るのは大変すぎるし、スカウトの効率を上げる努力をするのは当たり前のことだと思う。

自分が伝えたいのは、「人としての誠意や熱量を忘れるな」「ウソはつくな」ということだけだ。
ルフィを見てほしい。仲間を誘うときの嘘のなさ、熱量。自分もそういう船に乗って冒険したいと感じるのは、マーケターに限った話ではないと思う。

上から目線で書いているようだが、これは自戒の言葉でもある。自分もスカウトもらう側の責任としてできるだけ誠実に対応したいし、採用する側としても熱量を持って仲間を誘うことを大切にしている。

以上が「自分がもらって嬉しいスカウトメール」のポイントだ。主に企業スカウトを想定して書いたが、エージェントの方にもぜひ読んでいただきたい。


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