『誕生日を知らない女の子』(黒川祥子 集英社)

今年一番心に残った一冊
『ルポ虐待』のレビューを書いたときに、土屋敦が今度出るこの本をぜひ読んだらいいとコメントしてくれた。

へえ、開高健ノンフィクション賞受賞作か。それは読んでみなくてはならないな、と思っていると、『ノンフィクションはこれを読め!2013』出版記念トークイベント in ジュンク堂書店大阪本店で、東えりかが発売前の見本本をもってこれはおすすめです、と力説。選考委員満場一致で選ばれたのだという。赤くけぶる中
に花を抱えた裸足の少女が立っている表紙が印象的な本だった。

『誕生日を知らない女の子』は虐待を受けた子どもたちのその後を追ったノンフィクションで、主にファミリーホームという小規模住居型児童養育事業施設でのエピソードをつづる。

去年は家族がテーマの小説をよく読み、今年は虐待をテーマにしたノンフィクションが気にかかった。今年の締めくくりに出会った本作は、虐待のその後という今まで意識しきれなかった部分、センセーショナルな「虐待」という暴力の影に隠れた、しかし決して見逃してはならなかった部分に焦点を当てている。今年最後に出会った本が、今年一番心に残る一冊となった。


2013年、書評サイトで上記のように書いた。

我が家では親子で読んだ本だった。
今や本を全然読まなくなった遊び人の長男だが、マイベストを聞くと『誕生日を知らない女の子』と言う。小説もノンフィクションも児童書も、溢れんばかりの環境だった彼だけど、「俺はこの本がとにかく心にあるんよね」と言う。


『誕生日を知らない女の子』(黒川祥子 集英社)


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