見出し画像

映画を真の意味で味わうには・・・

映画というのは、なぜ斯くも一瞬にして、人々の心を虜にするのか。

久しぶりにレイトショーに行ってきた。スピルバーグの最新作「Ready Player One」である。つい先日まで「ペンタゴン・ペーパーズ」が上映されていたばかりであるだけに、すぐに彼の作品を見れるのは嬉しいばかりであるが、常に大量の映画やドラマを抱えるスピルバーグとエイブラムスの頭脳は一体どうなっているのかと気になって仕方がない。

そんな私には、映画館に行くときに守っているルールがある。

①1人でいく
映画を鑑賞する際に、知り合いと隣同士で鑑賞することほどしんどいものはない。思う存分に涙したり、腹の底から笑うのが憚れるからである。見知らぬ人の方がまだいい。その場限りの関係だからである。

しかしながら、自分のそのような姿でも気の許せる場合であればこれは当てはまらない。父と男二人で観る映画というのもなかなかに面白い体験である。終わった後も、特に直接映画について話すわけでもないのだが、互いがどう感じているのか探りあうのである。まあ傍から見たら奇妙なやり取りだ。

②極力レイトショーに行く
①と殆ど同じ理由であるが、映画の世界にどっぷり浸かるためには、周りを意識する必要のない環境が重要である。そして極力、余韻を残したまま眠りにつきたいのだ。これほどの幸せはない。

③エンドロールが終わるまで座っている
本編が終わった瞬間に席を立つ人が多い。トイレに行きたいとか特別な理由があるならともかく、なぜ席を立つのかと私にとっては不思議でならない。

というのも、本編が終わり、クレジットが流れるあの瞬間以上に映画をしみじみと振り返り味わう時間はないからである。そして、劇場の真っ暗闇を弱々しい明かりが満たしていく。明かりの広がり方はゆっくりであればゆっくりであるほど、なお心地よい感覚のまま私たちを現実へといざなってくれる。そしてあの分厚い扉を出て私たちは現実に戻ってくる。これはホームシアターでは絶対味わえないものだ。だから私は、映画館というあの特殊な空間がたまらないのである。

『キネマの神様』にもこんな一節がある。映画館ならではの味わいを、これほどまで的確に表した描写はないであろう。

名画はどこで観たって名画だ。けれど夏の夜空に咲く花火を、家の狭いベランダからではなく、川の匂いと夜風を感じる川辺で見上げればひときわ美しいように、映画館で観れば、それはいっそう胸に沁みる。


今日みた映画は、「Ready Player One」。

スピルバーグの最新作である。Van HalenのJumpのシンセサウンドに導かれ、その興奮と期待がラストシーンまで夢の世界を突っ走っていった。

映画だからこそ体験できる世界に対し心躍るのは、何歳になってもきっと変わらないものなのだなと感じたものである。

「Reality is the only thing that's real.」

のひとことで本編は終わる。至極絶妙である。映画を通してのメッセージであるとともに、観客が圧倒的な満足感を感じたまま、現実へと戻ることができる絶妙な締めである。

そして、夜道を心地よい風を感じながら、しみじみと幸福に浸りながら歩くのである。レイトショーだから味わえる特権だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?