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「デス・ストランディング ディレクターズカット」をクリアしました

「デス・ストランディング ディレクターズカット」をクリアしました。面白かったです。

これ、オリジナルは2019年末に出たのか。コロナ禍の影響を受けたような描写もあったが、それより早かったことに驚く。優れたSFにはそういうことがある。

2010年代末というのは、グローバリズムの進展、アメリカ(に代表される先進国、日本も含む)における、リバタリアニズムとコミュニタリアニズムの葛藤、ポピュリズムの台頭、社会の分断。反出生主義の流行。20世紀的な国民国家的統合に由来する社会の崩壊みたいなことを実感するタイミングであった。

この世界では「時雨」という雨が降る。触れたものの時間を加速するこの雨のせいで、この世界では、どんなインフラを建設しても、どうせすぐ失われてしまう。これは、高い湿度、定期的に訪れる台風、そして地震の国という日本ならではの時間感覚のメタファーなのだが、これをアメリカを舞台とした作品に落とし込むため、「時雨」というSF設定が採用される。

この「作ってもどうせ壊れる」という諦観は、こうしてアメリカに「輸出」された。それは2010年代末のアメリカの気分にとってビビッドなものだったのだろう。

一方で、2010年代というのは、インターネット、スマートデバイス、SNSの普及による人々の繋がり直し、コミュニティの出現といった地平の開かれた時代であった。まだコロナ禍以前だった2010年代には、そこに前向きな希望を見出すことが可能だったのかもしれない。

(コロナ禍のドタバタ、陰謀論の跋扈、SNSで煽り散らすだけ煽り散らした結果、現職大統領が自分のシンパを国会議事堂に乱入させるというアメリカ合衆国議会議事堂乱入事件(2021年1月)なんかを思い出すことのできる2024年4月の私達にはいささか楽観的でユートピア的であったように思えるが、それは後知恵というものだ)

そんな時代に、傷つき、未来に失望し、刹那的に引きこもる個人が、もう一度社会と繋がり直す、回復の物語が描かれる。「どうせ壊れる」運命を避けられない世界で、それでもなお、安易に反出生主義に流れることなく、人とつながり、生きていくとするならば、それは一体どういう「覚悟」のなせるものなのか。そんなテーマを主人公の旅を通じて体験できる。大変おもしろかった。


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