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読んでない本の書評79「記憶スケッチアカデミー2」

93グラム。たまたま見つけたのが2だった。どこかに1があるはずだ、とわざわざ探すこともせず、2だけ読む程度には爛れた年末年始を送っていて、いい具合である。

 お正月の余技として、下手な絵を描いて笑ってもらうというのもよいのではないか、と思ったのだ。LINEスタンプであけましておめでとうを済ませるよりは、なんだかわからない絵を送り付けられて初笑いの方が、次に会ったとき多少の話題にもなる。

 この本のお題は「人魚」「にわとり」「パイナップル」「ギター」「カバ」「大仏」「ラクダ」「カッパ」「アントニオ猪木」「亀」「猿」である。
  全部描いてみて衝撃を受けた。思っていたより絵がうまくなってしまっている。笑えない程度の下手な絵だ。本書に次々と登場しているような「この人、記憶と手の接続に深刻な支障をきたしているのではないか?」という破壊力ある絵にはならない。
 どんなレベルのものでも毎日描いていると、多少はうまくなってしまうものだなあ、と感心しつつ残念でもある。36歳会社員南隆彦さんのように、仁王立ちした四本足のニワトリをてらいなく描いてしまうほどの独創性は、わたしにはない。

 とはいっても、探していくと必ず致命的な穴があるのも記憶のおもしろさである。量をこなすと、これは深刻な症状だ、という作品も中にはできあがるので、やりがいはある。
 そんなわけで数人の人にはお年始メールとして獅子舞と海老の縁起物イラストを送った。そこそこいい出来だったのではないか。


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