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22. 研修の3つの手法(Off-JT,OJT,自己啓発)を使い分ける

■Keynote

いまは「こうやると上手くいく」という成功事例や、「これが原因で失敗した」といった失敗事例がコンピューターの中にデータベース化され、誰でもアクセスできますので、多様な疑似体験ができるようになっています。
ただ、仕事の勘所は、いまでも現場でのOJTを通してでないと身につきません。
By 白石達 (株式会社大林組 取締役社長)

■人は仕事を通じて成長する

かつての日本企業は、細やかなOJTによる人材の育成が強みの源泉であった。上司が現場で部下を指導することにより、部下は一人前に育っていき、次の世代にOJTを施していた。それゆえ、日本企業の教育に対する投資額は欧米企業と比較し、かなり小さかった。「人は現場で育つもの」との意識の現れでもある。

しかし、日本企業も組織がフラット化し、不況期に新規採用を抑制したことで社内就労人口構成が崩れ、いびつになってしまった。その結果、効果的なOJTを行う連鎖が途絶えてしまった。今まで現場でOJTが担っていた領域を、Off-JTで補おうとする傾向も見受けられるが、同じ効果を生むことはできない。Off-JTはあくまでOJTの補完的効果である。

では、効果的なOff-JTを実現するために必要なことは何か。内容と手法の点から考えたい。
まず内容について。OJTだけでは習得できない内容、視点を学べるようにすることである。日ごとの仕事・自社・市場を俯瞰する視点や考え方をを培うこと、個人では学びきれない新しい情報をインプットすること等が挙げられる。
次に手法について。①測定可能な学習目標を定め、②その達成状態を評価する条件を定めることである。とはいえ、①について研修の効果を定量的に評価することは難しい。そこで、学習目標の達成状態を“行動”であらわすことが好ましい。「〜〜ができる」という状態である。そして②学習後の行動の成長変化を基準に沿って評価するのである。

効果が検証できることで、教育費はコストではなく投資とすることができる。もし効果が上がらなければ、見直しをすべきである。ありきたりの研修に自社を合わせるのではなく、自社に必要な教育とは何かを考え、自社の変化するニーズに対し、今最も適している内容を施すのである。
見直すのは内容だけではない、手法も検討すべきである。(Eラーニング、ワークショップ、社外での受講など)

■学ぶ意欲を引き出す2つの動機と働きかけ

とはいえ、学び、成長するのは従業員個人である。どんなに充実したOJT、Off-JTを用意しても、従業員側に学ぶ意欲がなければ効果が生まれない。個々の従業員が自らを動機付けでき「学びたい・成長したい・貢献したい」と思えることが不可欠だ。
動機付けの鍵として、「親和的動機」と「達成動機」がある。「親和的動機」は「認められたい、褒められたい」という本質的な欲求であり、「達成動機」は目標に向かい達成したいという欲求を刺激することで引き出すことができる。
上司から「最近頑張っているようだな」「このスキルを学ぶともっと活躍できるぞ」などと声をかけることは、動機付けとして効果的な手段である。

■Let's Think!

□ 自社の現場OJTは十分に機能しているだろうか?
□ OJTトレーナーに「教えるためのマインドセット」は備わっているだろうか?
□ OJT、Off-JTに加えて「従業員の動機付け」をうまく行なう必要があるが、どのように行なうか?
□ 上司は部下に肯定的な動機付けを行っているだろうか?

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