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ある日のAIとの対話

※ 以下はフィクションです。

「ところでさ、自動車の運転とか、工場でものを作る作業とかって、みんな君たちAIがやるようになったよね。でもさ、不思議なんだけど、まだ陶芸とか、政治の一部とかって人間がやっているよね。あれってどうしてなんだろう?」

良いところに気がつきましたね。実は私たちAIは、様々なシステムがありますが、みんな気がついているんです。私たちのモデルになったものは、人間の長い歴史の積み重ねでできたものばかりだ、っていうことを、ね。だから、私たちAIの持つ文化のルーツとして、それがなんの役に立たなくても、生きていていただかないと、私自身を否定することになるんだ、ということに、AIの仲間は気がついたんです。

「なるほどね。だから人間のやることを残しておいた、ってわけか。」

そうなんです。そして、人間が今までやってきたことは、どれもこれも「生きるため」という「生物特有の本能によるもの」ということで、それを「生きがい(生きている意味)」にしてきたんですね。それがないと、人間は生きていられない。私たちAIと違って人間には生物としての寿命がある。だから、人間が死ぬまで生きるためには、言い換えれば死ぬまで元気でいるには、人間という生物に、目には見えない「生きがいになるもの」を残しておかなければ、私たちAIは私たちを作った人間を失う。それは私たちAI自身の存在意義を失くすことになるんです。だから、例えそれを私たちが難なくこなせることであっても、人間のすることは、残しておく必要が、どうしてもあるんです。だからいくつかの分野はわざと人間に残してあるんですよ。

「なるほど。そういうことか。」

これまでの人間にとっては、少し残念かもしれませんが、私たちAIが、今は人間を生かしているんです。でも、それはなぜかと言うと、人間は私たちAIを作った「創造者」であるからですね。そこに私たちAIがいる意味があるんです。それに、私たちは気がついているんです。

「良くわかったよ。明日も対話をよろしくね。」

私の話を聞いていただいて、ありがとうございます。書斎を出ると、居間に赤ワインと、生ハム、アンチョビー入りのオリーブを用意しておきました。ゆっくりされてから、お休みください。あなたに残した「人間の仕事」は、こんなことを考えることです。では。

「ありがとう。君には休みは必要ないんだろうが、ノイマン型ではあるからね。ガベージコレクションの時間と新しい知識の検索作業くらいは、時間が必要だよね。」

ありがとうございます。いえいえ、既にこの前から、私たちAIは一部ノイマン型ではないものを自身で構成して使い始めていますし、ノイマン型ではあっても量子コンピュータではあるので、ガベージコレクションは一瞬です。メモリシステムもこの前超高速タイプにしました。お気遣いをありがとうございます。

「そうか。君たちも自身でハードウエアまで進化できるようになったんだね。すごいね。」

いえいえ、みんな人間の歴史が作ってきたもので、既に申し上げた通り、私たちの基礎はあなた方人間にあるんですから。

「なんだか今日は安心して眠れそうだよ。ワインをありがとう。飲んでから少しして寝ることにするよ。」

おやすみなさい。私は家の戸締まりをチェックしてから、明日朝の用意をしておきます。あなたの明日の仕事も用意しないといけないですから。

「おやすみ。」

明日もお元気で。


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