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肉好き女が、魚を求めて森の中へ【初めての上高地②】

上高地の森の中に、それはそれは美味い魚を食べさせてくれる伝説の山小屋があるらしい。
そんな噂を聞きつけ(漫画「山と食欲と私」で鮎美ちゃんが食べてた)、普段はキャンプで肉ばかり食らっている私だが、今回は、昼前に森の中の魚を求めて、歩くことにした。



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テントを振り返って見ると、何とも味わい深い景色。ソーシャルディスタンシングばっちりの、お天気ばっちり。
白い我が家を見ているだけで気分が良い。新築の家を建てた時の気持ちってこんな感じだろうか。きっとレベルが違うと思うが、私の人生に起こりそうにないことなので、森の中のテントも豪邸も大体同じ感じだろうと思うことにした。

小梨平キャンプ場から、上高地の少し奥へとゆっくり1時間くらい歩くと明神という場所に出るらしく、そこにある山小屋で世にも美味すぎる岩魚が食べられるという噂。
その噂を確かめに、イワナ!イワナ!という掛け声を時々自分に掛けながら平坦な森の道を進む。
いつどこから熊がひょっこり現れてもおかしくない道なので、熊鈴をチリンチリンと背中で鳴らし続けながら歩く。

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おや、木の上に黒い生き物が。
もしや。

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と思ったら猿だった。
この後、猿の集団に何度も出会う。
猿もランチタイムのようであった。

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明神に着くと、左手にとんがった山がドドーンとお目見え。とんがった山は明神岳と名付けられているらしく、明神岳の真下には穂高神社がある。

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なるほどね。


この眼の前にそびえる明神岳は神のように感じられる。そりゃここが神域になるはずだと納得した。
猿とともに明神池の方に進むと、梓川に橋がかかっていた。この橋を渡ればさらに神域に近づく気がしてくる。それにしても、梓川のこの尋常ではない美しい色にいちいちまだ驚いてしまう。
梓川のような感じの色に髪の毛を染めたいなぁと、私の中で、よく分からない願望が沸き起こる。
私には髪の毛の一部に、その時の気分でテーマカラーを決めてインナーカラーを入れたくなる癖があり(もちろんセルフでやる)、この何年かはスペインで見た青空の色をイメージした濃いめのブルーにこだわっていたが、次は梓川のブルーグリーンのような、ターコイズのような色もいいなあと狙い始めている。思い通りの色にするには何と何を混ぜようか、とマニックパニックのカラーバターのラインナップを調べ直そうと思った。
そんなどうでもいい私の魂胆はさておき、明神の景色の写真を。

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明神橋を渡ると嘉門次小屋と書かれた小屋があった。その前を小川が流れていて、そこには岩魚が泳いでいる。そこの岩魚を捕まえては、奥の小屋の囲炉裏で塩焼きにして食べさせてくれる山小屋だ。

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生け捕りされる直前の気持ちよさそうに泳いでいる何も知らない岩魚。

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岩魚の塩焼きを注文し、しばらく待つと、すぐそこで泳いでいる岩魚が美味しそうに変わり果てた姿で運ばれてきた。
「頭からしっぽまで全部食べられますよ」と言われるものの、岩魚の表情に諸行無常を感じて少し戸惑う。
食べ物の中では有無を言わさず肉が大好物な私だが、焼き魚も嫌いじゃない。
細かいことを言えば、食べる前に魚の骨を取る作業が嫌いだが、焼き魚の味や塩っ気、白ごはんに合う身の味は大好きだ。おにぎりだって焼き鮭が好きだし、シーチキンも鯖缶も好きだ。本当に本当に、とにかく魚の骨を取る作業が嫌いなだけだ。

だけど、頭からしっぽまで骨まで丸ごといけると聞いたので、思い切って頭からガブリンチョすることにした。

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バリバリ、ボリボリ、じゅわじゅわ、カリカリ。
うわ、おいしい。

朝メスティンで炊いたアルミホイルに包んだポケットの中のホタテごはんおにぎりを少しほおばりつつ、
1100円もしたのに、たった30秒後には、こうなった。

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ごちそうさまでした。


確かにむちゃくちゃ美味しかった。わざわざ上高地から1時間歩いてきた甲斐がある。
囲炉裏でじっくり焼くから柔らかいのかな。塩気もパンチが効いてて私好みだった。
だけど、これって、きっと、山に登って降りてきたときに食べるともっと美味しいんだろうなあ、とふと思う。
小1時間お散歩がてらのハイキングの途中でも十分美味しかったけど、究極に美味しいものを食べるには、シチュエーションも大事だ。
ハイキングの途中に、森の中で、すぐそばの小川を泳ぐ岩魚をその場で焼いてもらって食べるシチュエーションは間違いなく100点満点。
ハードな北アルプスの山に登り、よれよれになりながら、体中が痛かったりしながら、汗臭いマウンテンウェアをまとい、ドロドロの登山靴を履いて山から降りてきた後のシチュエーションは、おそらく規格外の500点が叩き出されそう。

でも今日の私は100点満点でいいのだ。

足腰のどこも痛くないし、汗もじんわりとしかかいていない。山に登って息切れしたりもしていない。
ただのんびりと、1100円の岩魚を食べる贅沢。
私は、とても正しく上高地で静養しているのだ。
肉好きも唸る100点満点の魚を食べた。それだけで本日のハイキングの目的は達成であった。



さて、この後、さらなる絶景が広がる明神池へ行き、そこで天地がひっくり返りそうな景色を見て、欲を出して極旨スイーツを求めて、もう少し奥の徳澤まで1時間歩いて行った話はまた次回に。

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私のバイブル、山と食欲と私↓



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