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見えない心、見えない命
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#詩

涙があふれる

涙があふれる

やっぱりだった

家の近所のおばさんは亡くなっていた

遊びにおいでといってくれていたのに

母よりも少し先に

私がおばさんを最後に見たと思った時は
おばさんのお葬式だった

私はおばさんの姿を見たはずだった

でも違っていた

あれはなんだったのか

誰だったのか

幻か

わからない

でもおばさんは娘さんの家にいて

ひとりで亡くなったのではないと知ってホッとした

さみしくなかったね

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ゆきつもどりつ

ゆきつもどりつ

少しだけ進めたと思ったら

また後戻り 

ずっとそんな繰り返し

前は全く進めなくかったから
ちょっとは変わってきたのかな…

三寒四温と同じこと

お祈りをしながら涙が止まらない

母はいつも私のとなりにいる
ふしぎだけどそう思う
一緒にご飯を食べ、一緒に買い物に行き、そして一緒に祈る
肉体は見えないだけ
さみしくない

明け方に目が覚めて
「お母さん」と呼んでみる

母の優しさが身に染みた

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じいちゃんの魂

じいちゃんの魂

じいちゃんはいつも言っていた
「人間は死んだら何にも残らない、枯れ葉が落ちるように、それでおしまい」

魂の存在なんか信じてはいなかったんだろう

ところがじいちゃん亡くなって、葬式が終わり、
私たち家族が飛行機に乗って自分の家に戻る時

途中でガクンと飛行機が揺れた、大きく沈んだ

母と私は顔を見合わせ

「今のは絶対にじいちゃんだよね、オレをおいて行くなって…オレも一緒に行くって」

なぜだか

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卯の大祭

卯の大祭

一昨日は天命庵で四卯大祭

普通は三卯らしいけど

卯年、卯の月、卯の日で三卯
卯年、卯の月、卯の日に卯の刻で四卯となる

次は十二年後

おやさまの赤着のお守りを頂く

お守りは心で頂く

心がお守り

大祭の日は人いきであふれんばかりでくたびれる

そしていつも一緒にいるはずの母にはお守りもらえない

肉体のない魂だけの存在だから

そうしたらね
やっぱりさみしくなった

母がいない、母がいな

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誰のせいでもない

誰のせいでもない

雨降り、雨降り

こころのなかは雨ばかり

季節は春が来ていても

暖かい春
明るい春
ウキウキする春
なのにわたしの心は、晴れない

冬のまま

仕方ない

母がいない、母ロスのわたしだから

誰もいない

一昨日はお社さんの震災鎮魂のコンサートが仙台であった

震災でなくなった魂は救われますように
みんなみんな、救われますように

震災だって誰のせいでもない

人間にはやりきれないことがいっぱ

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清美ちゃん

清美ちゃん

この時期になると思い出す

祖母が食べてた清美ちゃん

昔、昔にあったんだ

多分、新しモノ好きの祖母だったから

そのときに初めて知った清美ちゃん

白いレースのカーディガン

清美の汁で汚してた

そんなことだけ覚えてる

それが祖母の生きてる姿

優しい祖母を思い出す

母のこと頼むね
#今こんな気分

春が来たよ

春が来たよ

庭に花が咲いていた

春になると咲く白い花

気づかぬうちに

いつの間にか

咲き始め

母を呼ぼうとしたけれど

母はいない

心の中で静かに母へ話しかける

うれしくて

咲いた、咲いた、花が咲いた

声に出しては言えないけれど

さみしいけれど

寒い冬のあとには

春が来るんだね

波打ち際

波打ち際

私の心はいつも波打ち際

寄せては返す波打ち際

母があの世に還ってから

ずっとずっと

足元をすくわれる

困ったね、弱ったよ

母の代わりは誰にもなれない

つまらんね、たまらんね

片腕もがれ、本当に足も引きずる

なんだろう、どうしてだろう

あなたはお母さんなんだから

しっかりしないと

そう言われても

頭ではわかっていても

心が身体が拒否反応

もう息子だって大人だよ

ただね

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心此処にあらず

心此処にあらず

息子は自分の家に帰ってゆき

入院中の従姉からは電話があった

雨戸を閉めてひとりぽつんとリビングで

母の座っていた椅子にたたずむ

あぁさみしい

ひとにふれるとさみしさは増す

母がいなくなってから

ずっと心此処にあらず

魂をどこかに飛ばして

肉体だけで

ただ息をして
食べて
寝て
トイレに行き
風呂に浸かるだけの

放心状態

何をしているかも分からない

息子と喧嘩しても人目をは

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自分ばかりと思わないで

自分ばかりと思わないで

片翼をもがれた感じのまま

時だけは過ぎる

母はこの世から卒業していった

それは悦ばしいこと祝福のはずなのに

私の心の準備がまだまだだった

大好きな、大好きなひとを

いまも追い求めている

かなしくてつらくて苦しいのは

私だけではない

寄り添ってくれる人もいる

私はその人のことを思いやれない

その人もわたしと同じように傷ついているはず

だけど私は目の前の困っている人にも手を差し

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卯の香立て

卯の香立て

母が大好きだったケイさん

リュウマチで身体が不自由

でも心はとても自由

明るい人

いろんなものを克服して

母は力をもらっていた

でもケイさんも母から力をもらっていたと

母も明るかったから

母はケイさんに鳩の形の小さな小さな和三盆のお菓子をあげた

あげたがりの母

ケイさんのがんばりには頭が下がると

二人で行って駅前のお店で買った

ほんの数ヶ月前に

母があの世に旅立ったことを

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春のまなざし

春のまなざし

暖かい日差しが

こころの扉を少しやわらかくする

締め切った窓を開けて

日差しを浴びる

どこからか春の香りが流れ

やさしい風が頬をかすめる

あちこちから鳥のさえずりが

鳥たちがささやいている

時は流れる

いつの間にか春

私はこれからどうしよう

不安になる

でも焦らない

地に足をつけて

のんびりと進めばいい

上弦の月

上弦の月

母が肉体という衣を脱ぎ捨てて

魂だけになってから

四十九日が過ぎました

昨夜は上弦の月でした

母がおやさまに掴まって天国の花園に行ってから

二度目の上弦の月

月がとても美しい夜でした

星も輝いていました

もう泣かない

少しだけわたしの気持ちも落ち着いてきたかな

と思ったけれど

やはりまだまだ無理でした

母の冷たくなった手を思い出すと

それだけでつらくなります

もう還って

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フリーフォール

フリーフォール

あまりの速さに

息子はね

ばあちゃん、フリーフォールだったよ
ねって

うまいこと言うよね

まさにフリーフォールのごとく

あの世に一直線

こちら側の者は感じた

あっ!という間にいなくなった

嘘だよね

まだ信じられない

だって日付変更線をまたぐ頃

ほうじ茶飲んで、磯辺巻き食べて、キュウイフルーツ食べたのよ

そして自分の食べた食器を洗い

自分の入れ歯まできれいにして

ベッドに

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