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ザ・ベストテン (山田 修爾)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 この前、家に帰ってたまたまつけたテレビで、黒柳徹子さん久米宏さんがお二人で登場して当時の話をされていました。
 私ぐらいの年代の者にとっては、強く印象に残っている番組ですね、TBS毎週木曜日夜9時からの「ザ・ベストテン」

 本書の著者は、「ザ・ベストテン」の生みの親、元TBSプロデューサー山田修爾氏です。

 プロデューサーが出演者を選定する「キャスティング方式」で作られていたのが従来の歌番組ですが、その対抗軸として考えられたのが、実際の楽曲のセールスや視聴者からのリクエストはがき数等を反映した「ランキング方式」。
 『ザ・ベストテン』は、このランキング方式を本格的に採用した最初の歌番組でした。

 エポックメイキングな番組の誕生から、毎週の番組制作、そして幕引きまで、怒涛の荒波にもまれ続けた『ザ・ベストテン』の歴史が、数々のエピソードとともに語り尽くされた著作です。

 シンプルですが、強いインパクトを放った番組の「タイトル」、その名付け親は、企画検討の議論の中で「キャスティング方式」を強く主張していた渡辺プロデューサーでした。

(p23より引用) 「ったくおめえらイモだよ。シュージ!バカヤロー!なに考えてんだ。おめえら田舎ものにはわからねーだろうが、aとtheの違いわかるか?この番組はtheなんだよザ・ベストテンなんだよ。『ザ・ベストテン』・・・」
 頼もしいと思ったし、渡辺さんも心底、番組のことを考えてくれてるんだと涙が出る思いだった。

 「出演しない歌手を認める歌番組」、申し訳ありませんと何度も頭を下げる久米さん。「系列局のネットワークを駆使した生中継」、羽田空港から、新幹線のホームから、原爆記念日という特別の日の広島から・・・、「海外との双方向衛星中継」、ニューヨークから、ドイツから、・・・・・・。

(p39より引用) 先例がない番組は、制作を進行させながら自分たちで“先例”を創るよりほかない。『ザ・ベストテン』の仕事は、そのくり返しで、とても客観的に番組を見つめることはできなかった。

 『ザ・ベストテン』は、本当に特異な試みでした。
 ともかく新しいことをやってみよう、視聴者は求めているはずだ、そういった「強い信念に基づくチャレンジ」、そして、それを実現させるために考えよう、行動しようという姿勢が、現実のものとして現出した見事なエネルギーの結晶だと思います。
 「制作者」「視聴者」「出演者」、「三位一体の番組制作」。確かな信頼と連帯感が見事に存在していた番組でしたね。

 そして、生放送という制約を見事なエンターテイメントの舞台に仕立て上げた黒柳さん、久米さんの名コンビ、お二人の臨機応変・当意即妙のやりとりは超絶でした。
(昨今のバラエティ番組で定番となってしまった“お笑いタレント”の空疎で表層的な内輪受け話とは、全く異次元です)



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