見出し画像

田舎はいやらしい 地域活性化は本当に必要か? (花房 尚作)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 「セカンドライフに田舎暮らし」とか「古民家再生」とかの話題には興味を持っていたので、タイトルに反応して手に取ってみました。
 書かれている内容は、過疎地域での暮らしを踏まえた実態レポートといった体ですね。

 本書での花房尚作さんの問題意識は「地域活性化推進の是非」にあります。

(p114より引用) しかし、本当に「地域の活性化は正しい」のだろうか。活性化している地域は好ましい町で、活性化していない地域は好ましくない町なのだろうか。それは都心で暮らしている者の勝手な思い込みではないだろうか。
 一口に地方といっても、県庁所在地のように交通の便が整っている地域もあれば、陸の孤島になっている地域もある。過疎地域の中にも都市に近い場所に位置する過疎地域もあれば、都市から遠く離れている過疎地域もある。都市から遠く離れている過疎地域の中にも山村や漁村、離島もあり、それぞれ置かれている状況が違う。それらをすべてまとめて 「地域の活性化は正しい」と論じてしまって本当によいのだろうか。過疎地域の活性化は本当によいことで、過疎地域が衰えるのは本当に悪いことなのだろうか。

 過疎地に暮らす人々は、活性化など望んでしない、無理やり活性化させるのではなく、穏やかに衰退させた方がその地に暮らす人々にとっても、日本の地方自治にとっても望ましいのではないかとの疑問です。

 しっかりとしたソフトランディングの道筋をつけて “幕引き” に導くことも、十分に現実的な地方行政が取るべき政策の選択肢のひとつですね。

 本書で花房さんが指摘しているように、「中央政府視点」「都市視点」からの(勝手に良かれと思って頭で考えた)政策を強要するのではなく、「現地視点」でそこに現に住んでいる人々の希望や主張に根ざした「在り様」をイメージしてどうするのが(or どうしないのが)望ましいのかを考える姿勢は大切でしょう。

 さて、本書を読み通しての感想です。
 花房さんの「過疎地行政」に関するタテマエに囚われないストレートな疑問はなかなかに的を得ているように思います。ただ、論考としては、その根拠、論理、結論、そしてそれらの記述・・・、あらゆるパートが粗削りで、その詰め方にはもの足りなさが残りました。
 着眼点はとても面白いだけに、ちょっと “もったいない” ですね。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?