中継されなかったバグダッド -唯一の日本人女性記者現地ルポ- イラク戦争の真実 (山本 美香)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
会社の近くの図書館の「返却棚」にあった本です。
著者の山本美香さんは、世界の紛争地を中心に取材活動を行っていたジャーナリストです。
本書の舞台は今から10年あまり前(当時)のバクダッド、イラク戦争の取材ルポです。
取材ルポといっても、彼女の本職は「映像ジャーナリスト」なので、文字として記録されている内容は、数多くの対象者に取材をし尽くして事実・真相を掘り起こしたといった類のものではありません。現地の有りのままの姿をストレートに書きとめたという印象です。
それだけに、読んでいてシンプルに新たな気づきのインパクトが伝わってきます。
たとえば、よく耳にする「最前線」の現場・現実に触れたくだりです。
確かにそうなんですね。私としては、こういった暮らしの中の動的なものとして「最前線」をイメージすることは未だかつてなかったので、正直、ちょっとショックでした。
もうひとつ、米軍の攻撃に晒されているバグダッドで1シーン。取材現場の様子です。
ここに登場する各国のジャーナリストは、ニュートラルな立場で戦争の真の姿を報道しようという強い意思をもった人々です。それ故彼らは、戦争当事者にとっては有難くない存在でもあります。
米軍のバグダッド侵攻での攻防の中、著者をはじめとしたジャーナリストが拠点としていたパレスチナホテルが砲撃されました。イラク軍ではなく米軍によってです。
パレスチナホテルの1階から攻撃した事実はなかったと著者は断言しています。自分たちはずっと部屋にいた、ホテル側からは何の音も聞こえなかったと。
2012年8月20日、山本さんは、シリア内戦の取材中、シリア政府軍の銃撃を受けて、搬送先の病院でお亡くなりになりました。
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