見出し画像

プロフェッショナル シンキング ― 未来を見通す思考力 (ビジネス・ブレークスルー大学 編)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本していただいたので読んでみたものです。

 よくある「○○シンキング」と銘打った典型的ビジネス書ですが、その目次をみると、

第1章 準備運動――「思考逃避」のもたらす危機
第2章 思考逃避がもたらす固定観念を打破する
第3章 大局観を持つ――市場の未来を見通す思考力1
第4章 ある程度予測できる未来を読む――市場の未来を見通す思考力2
第5章 新しい未来を創り出す――市場の未来を見通す思考力3
第6章 事業構造と顧客交点アプローチ――顧客の未来と未来の顧客を見通す思考力1
第7章 時間軸と顧客交点アプローチ――顧客の未来と未来の顧客を見通す思考力2
第8章 顧客個人の内面と外部交点アプローチ――顧客の未来と未来の顧客を見通す思考力3
第9章 未知の問題解決に挑戦するための集団IQ

と、複数の著者がひとつのシナリオに沿って、自らの得意分野の解説を進めるという構成になっています。

 そのなかでは、平野敦志カール氏が担当した第3章から第5章のパーツが分かりやすかったですね。もちろん、氏が提唱している「プラットホーム戦略」の概要にも触れられています。

(p118より引用) プラットフォーム戦略とは、簡単に言えば「多くの関係するグループを『場』(プラットフォーム)に乗せることによって、外部ネットワーク効果(いわゆる口コミ効果)を創造し、新しい事業のエコシステム(生態系)を構成する戦略」のことです。

 この戦略は、他企業との有機的な協業を前提とした戦略であり、その企業連合が生態系を形成するわけですから、生態系同士の生存競争が繰り広げられることになります。
 そういう熾烈な競争に勝ち抜くためには、どの陣営に入るのか、その中でどういう位置づけを占めるのかが決定的に重要になります。

 このプラットフォーム戦略は “知財戦略” も様変わりさせます。
 従来は、知財をいかに自社の中に蓄えるかが重要でしたが、最近は、トヨタのHV技術に代表されるように、自社の知的財産を無償で公開する例が出てきました。

(p135より引用) オープン・イノベーションとは、企業が自社開発の技術だけでなく、他社の特許やアイディアを組み合わせることで、革新的な商品やビジネスモデルを創り出す手法のことです。

 競争優位なエコシステムを創り上げるためには、いかにしてより強力なパートナーを取り込むのがか肝になるわけですが、そのための誘引がこの知財の無償提供です。
 とはいえ、当然ではありますが、何でもかんでもオープンにしてしまうわけではありません。

(p136より引用) 注意が必要な点は、「どこまでを自社が行い、差別化を保持しながら、どこからをオープン化するか」という全体戦略を事前にしっかり構築し、必要な知的財産などを確保することでしょう。

 さて、本書を読んだ印象ですが、思いのほか “正統派のビジネス書” だと思いましたね。
 「○○思考」とか「△△分析」とかといった多種多様なフレームワークが紹介されていますが、それらの解説も、そのフレームワークに実例を当てはめて具体的な出来栄えを示しつつ丁寧に記述されています。

 大前研一氏が監修している「BBT大学シリーズ」にしては、今までのものと比較して際立って“宣伝色”が少なく、ちょっと意表を突かれてしまいました。(と思っていたら、やはり最終章はBBT大学のPRでしたが・・・)



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?