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ガラスの城 (松本 清張)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 このところ図書館で予約している本の受取タイミングはうまくいかず、また読む本が切れてしまいました。ということで、昔読んだ本を納戸の本棚から引っ張り出してきました。

 選んだのは、今から30年近く前に買った松本清張さんのミステリー小説です。ちょっと前にも同じような動機で「点と線」を読み返したのですが、この本もそのときと同じく、内容は全く覚えていませんでした。

 本の性格上、引用等は控えますが、まずは構成として「二人の関係者の手記」という形で物語を展開させているのはとても面白いですね。
 それぞれの人物が、身近に起こった事件を素人探偵さながらに調べていくその詳細を描いているので、その手記を読み進めている読者自身も自然と “謎解き” の主体者となってしまうわけです。
 さらに、その推理が “女性の視点” からというのも工夫された点でしょう。

 本作は、1960年代頭の女性雑誌に連載された作品ということもあり、物語の舞台も当時羨望の的であったであろう “昭和の大企業” に設定されていて、時代感が色濃く漂う当時のオフィス風景や社内の人間関係等の描写にも興味深いものがありました。

 昔の作品を読むと、そういった今と違う “世相” を垣間見ることができるのも楽しみのひとつになりますね。



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