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贄門島 上/下 (内田 康夫)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 かなり以前、内田康夫さんの作品は集中して読んだことがあります。
 一番最初は「シーラカンス殺人事件」だったように記憶しています。そのあとは、定番となった「浅見光彦シリーズ」に入っていくのですが・・・。

 今回は、図書館の新着書のコーナーで、久しぶりに「内田康夫」さんの名前をみたので、半ば衝動的に借りてきました。

 この作品は浅見光彦シリーズの中では比較的後期のものです。お決まりのタイプごとの登場人物が揃い、地方色を色濃く醸し出しながらストーリーが展開されていきます。

 ただ、久しぶりに読んだ印象はあまりよくありませんでした。
 読者に妙に諂ったような描写が増えています。さらに本書の背景になっている材料のせいもあるのでしょうが、物語そのものというよりも書きぶりというか娯楽作品としての体裁にも不満を感じました。
 作家が社会的・政治的評論を発すべきではないとは微塵も思っていないのですが、どうもストーリー展開に必要な扱いを越えた著者の意見の挿入が目立ちます。個別の政治家が揶揄されている点でいえば、いわゆる “社会派” ともまた違うんですね。

 このシリーズは、初期の作品群のように “単純なエンターテインメント” に徹した方がいいように思います。それが、小説のプロットにも主人公のキャラクタにもマッチしています。

 後期のシリーズではこの「贄門島」のようなテイストの作品のウェイトが増しているようだと、これでまた当分、“浅見光彦シリーズ” は手に取らなくなりますね。



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