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ちゃんとしたレズビアンじゃないのかなって。レズビアンって名乗っていいのかなって思ってた。

■女性なのに女性が好き

という自分自身に戸惑う
野本さん(比嘉愛未)は、
同僚に「レズビアンの私が」と、
あっけらかんと言うのに、
SNSで知り合ったyako(ともさかりえ)には、
レズビアンとしての
自分が抱える冒頭のような
悩みを打ち明けてしまう
(先週の『作りたい女と食べたい女』)。

野本さんは、性別を抜きにして
恋愛に対して慎重で、しかも
性的欲求に欠ける。
冒頭の言葉は、
それを気にして発せられたのだ。

この「作りたい女と食べたい女」
というドラマが面白いのは、
「女性なのに女性が好き」という
マイノリティとしての悩みが、
性別を超えて人間同士の距離を
いかに詰めていくかという
コミュニケーションに、
つながっているからだ。

■胸詰まる気持ちの探り合い

野本さんが恋愛対象として見ている
お隣の春日さん(西野恵未)に
チョコレートを贈るときなど、

「春日さんが今のままの関係を
心地よく思ってくれてるんだとしたら、
私が思いを伝えたら、
その関係を変えてしまうことに
なるじゃないですか」。

と、やはり
yakoに悩みを伝える。

これって、
まさに男女の友人関係が、
恋人関係に変わるときの悩みと
変わらない。

ところが、
一方でその春日さんも、

「私の人生にとって、
野本さんみたいな人は、
初めてなんです。
こういう気持ちを、
恋って言うことは、
あると思いますか?」


と、引っ越してきた
南雲さん(藤吉夏鈴)に相談している。

そして

「私が野本さんのことが好きでも、
野本さんが恋愛をしたい方かは、
分からないですものね。
それに、女性を好きになる方か、
というのも」。

        *

つまりそれは、
相思相愛の二人の女性の恋愛模様。
いや、
相思相愛の二人の人間の恋愛模様だった。

このドラマは、
「昔から二人組をつくるのが苦手」な
感じの二人が、恋心をもてあます
心の動きをゆっくりと語っていて、
レズレズビアンかどうかは関係なく、
また、レズビアンとはどうあるべきかも
もちろん関係なく、
その心のとけていく感じがいい。
                             

■相手に干渉されるのは嫌?

しかし、
いまどき、
こんな気持ちの探り合いを
「恋愛はコスパが悪い」と言いながら
遠ざける人たちや、
「赤ちゃんは欲しいけど、
パートナーはいらない」などと
母の座をショートカットで
得ようとする女性が急増中なのだとか。

ドラマの二人は、

野本さんが
「これってつまり、
両想いってことですか?」、

春日さんが
「恋愛として野本さんのことが
本当に好きです」

という関係になる。  

   *

「恋愛はコスパが悪い」や
「パートナーはいらない」と、
異なる感情がぶつかったり、
誤解したり誤解が解けたり、
どちらかの気持ちが重くなって
バランスが崩れたり。
そんな人間関係の揺れ動きを

遠ざけて生きようとする
人たちは、もしかすると
「自分」とのつきあいも
うまくできないのではないか。
そんな不安を抱いてしまう。

それが昨今よく言われる
「生きづらさ」にも
つながってしまう、
と思うからだ。



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