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幸小路 榛柊
2018年7月8日 17:51
九年前父親を亡くしました。亡くなる二年程前に前立腺ガンを患い、本人はガンという事に大変衝撃を受け、今まで見たコトがない程、憔悴していました。でも医師に「進行が遅いガンで、寿命が先か・・・といったモノでしっかり治療すれば大丈夫ですよ。」と言われ、当時66歳だった父は徐々に生きる気力を取り戻していきます。その時よく耳にした言葉が「ワシはようもって二年くらいやろな!」でした。何を根拠にそ
2018年7月7日 17:00
ーーーコウキは届いた封書の その軽さとは真逆に 何か重みのあるモノを感じた。 「国際デザイン連盟」・・・。 ヒロヨシの職業はデザイナーだ。 客の要望に応えるよりも 自分の思いをぶつけ過ぎる 傾向があったタメか 変わりモノ扱いされ お世辞にも順調な受注とは言えない 売れないデザイナーだった。 ヒロヨシが倒れる前の
2018年6月20日 11:55
〜残された者たち〜ーーーヒロヨシが亡くなると 家族はすぐに葬儀の手配に 取りかからなければならず、 突然現実の世界に引き戻される。 喪主はコウキが務めるコトになった。 ヒロヨシは密葬を希望していたので 身内以外にはごく親しい 彼の古くからの友人や 仲良くしていた近所の人たちに 声をかけた。 慌ただしく過ぎる時間というのは 悲し
2018年6月9日 11:31
〜さよなら現世〜ーーーヒロヨシの脈拍が下がり始めた。 ベッド横のモニターからは 危険を意味するアラームが 病室内に鳴り響いた。 医師達が駆け付ける。 でも動揺しているのは 家族だけだった。 医師達にはもう分かっている事だ。 脈拍は下がり続ける。 苦しそうなヒロヨシを見て 家族はただしっかりと 彼の手を握り、
2018年5月30日 10:25
〜遠吠え〜オレのおじいちゃんは亡くなる前にこう言ったそうだ。「我が人生に悔いなし」と。オレもそう言いたかったけど残念ながらその言葉を胸を張って言えるほど全てをやり切っていない。でも悔いを残さないタメに思いついたコトはなるべくやってみるようにした。たとえそれがウマくいってもいかなくてもやるにはやったんだからそこは良しとしていいよな。負け犬の遠吠えかな。でもオ
2018年5月23日 16:21
〜真っ白な空間で〜ーーーヒロヨシが倒れてから 十日が過ぎようとしていた。 これまでの感覚と違い、 どこかずっと彼方の なんにもない真っ白な空間 そんな場所にいるような 気持ちだった。妻はソバにいるのか?コウキは?マイは?誰の気配も感じないぞ・・・。ーーー延命処置により息はしているが 長くても1〜2週間の命だろうと 皆、医師から聞か
2018年5月8日 11:26
〜理由〜ーーー真夜中に実家で ヒロヨシの遺書みたいな手紙を 全て読み終えたコウキは しばらくの間、部屋の天井を ボンヤリ眺めていた。 顔を天井に向けるコトは、 父と過ごした これまでの日々を思い出すと どうしようもなく流れ落ちる涙を 食い止めるのに都合が良かった。 ヒロヨシは口うるさい父親だった。 それは コウキが不器用
2018年5月3日 11:26
〜遺書みたいな手紙・その3〜「マイへ」オマエは女だからお母さんの気持ちを一番分かってあげられるよな。お母さんが困ったり悩んでいたりしたら話をよく聞いてやってくれよ。お母さんはあまり弱音を吐かない。その分全部一人で抱え込んでしまうんだ。いつもと少し様子が違うなと感じたらきっと何か悩んでいる。間違いない。マイがソレを感じてくれさえすればお母さんもソレに気付くんだ。
2018年5月2日 16:13
〜遺書みたいな手紙・その2〜「コウキへ」コウキ、オレがいなくなったらくれぐれもお母さんのコトを頼む。お母さんはオマエたちの前では気丈に振る舞っているかもしれないけどあれでなかなか弱いトコロがあるんだ。だからオマエたちが支えてやってくれ。オレもまさかこんなに早く自分が死んでしまうなんて思ってもみなかったからな。コウキとマイだけが頼りなんだ。もう少しは生きてオマエた
2018年4月7日 16:44
〜遺書みたいな手紙・その1〜「妻へ」家族に宛てた手紙。自分がこの世からいなくなるとか、考えたコトもなかったからさ。ちょっと照れ隠しに遺書みたいな手紙ってコトで。「妻へ」オレがガンになったってコトでこんな手紙を書いている。まさか自分がガンになるとはな。オレ自身ビックリしているんだ。オマエには本当に迷惑をかけてきたな。オマエは自分の仕事を持ってはいたけどオレがし
2018年3月24日 12:02
〜予兆〜ーーー脳死を告げられたヒロヨシ自身も さすがに何かを感じていた。 四度目の破裂のその瞬間、 突然どこか未知の世界にでも 吹っ飛ばされたような感覚があった。あれ、オレどうしたんだろう?何か違うな。今までと。フワフワしてるっていうか宙に浮いているような感じ。もしかしたらもう死んじゃったのかな?あ、そうそう。もし本当に死んじゃったのならあの時家族
2018年3月22日 11:33
〜遺書〜ーーーコウキが実家に着いたのは夜の0時頃だった。 誰もいない実家 妙に物悲しい空気感 つい最近までヒロヨシがここで 生活していたこの場所 コウキはそれまで涙を流すコトを 必死で押し殺していた。 でもここに着いた途端それは解き放たれてしまった。 コウキがヒロヨシの脳死を告げられた後、 なぜか急に直感というか、 何かの知らせ
2018年3月9日 11:41
〜その言葉の重み〜ーーー大学病院への搬送も出来なくなり、 目の前のヒロヨシを呆然と見守るだけ・・・。 “脳死” という言葉を耳にして 妻や子供達は “もしかして” という一つの単語に 二つの意味を持たなければ ならなくなってしまった。 そしてその二つの意味すらまた 一つの現実にさらされる事になる。 夜明け前、三度目の破裂が起きてしまったの
2018年2月26日 11:41
〜予期せぬ日〜ーーーヒロヨシが大学病院に 搬送される正にその時、 落ち着いていた症状が急変する。 脳内で2回目の破裂が起きたのだ。 「この破裂は取り返しのつかない事態に 成り得るかもしれません・・・。」 すっかり搬送の準備をして、 なぜだか安堵感までをも抱いていた家族は 医師の容態の急変という言葉に耳を疑った。 医師はこう続ける。