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【序章】始まりは軽やかに。#1

このエッセイは、マガジン『韓国で農業体験 〜有機農家さんと暮らして〜』序章です。2017年、約4か月にわたり韓国の有機農家さん3軒で農業体験取材を行う前に、ホームページ「農あるくらし研究所」で書き綴っていたものを少しずつnoteに転載しています(一部加筆、修正あり)。

2017/03/16

 「何かを始める時、気負いは禁物だ」という文章を書いて消し、すでに気負ってしまっている自分に気づきました。初めて作ったホームページに「農あるくらし研究所」なんて大層な名前をつけてしまったからかもしれません。でも、私がこれまでやってきたこと、これからやろうとしていることを表現するには、研究という言葉が一番しっくりくるのです。さあ、気負わずに始めたいと思います。

 たった30数年の人生ですが、これまで出会った中で影響を受けた人たちは、きのうよりも今日、今日よりも明日を心地よく生きるために、「今いる場所で自分にできること」を気負わず、軽やかに始めている人たちでした。最初から「世界を変えるんだ」なんて意気込んでいない。たいていみんな、自分の身の回りをちょっと良くしたい、おもしろくしたい。そんな気持ちから始めています。

 例えば「近所においしいパンを買える店がない」ということを不服に思っていた人がいるとします。そんな人は気軽な気持ちで、一度パンを焼いてみるといい。別に最初からパン職人を目指さなくても良いわけです。「パン屋さんがない」と嘆くエネルギーを「自分でパンを焼いてみる」というエネルギーに変換するだけで、不満の種が楽しさや喜びに変わる。そして「パンは買うもの」と思って生きてきた世界の見え方が、少しずつ変わっていきます。

 これは私の実体験でもあります。20代半ばまで「パンなんて私には作れない」と思いこんでいたけれど、やってみると意外に簡単で楽しく、自ら手ごねした焼き立てパンはこの上なくおいしかった。小麦粉、水、イースト、塩、卵が目の前で化学変化を繰り広げ、パンが誕生する過程は、ものづくりの原点を見るようで刺激的でした。

 筆が乗ってきて、書きたいことがあふれ出しそうになっていますが、今日はここで終わりにします。これも、何かを軽やかに始める時のコツかもしれません。長く続けていきたいことほど、最初から頑張りすぎないで。「ま、やってみよっかな」という気持ちで、とにかく始めてみる。私は今日、そんな一歩が踏み出せたことに、とても喜びを感じています。

▲2015年秋、兵庫県西宮市の農業塾で育てたサツマイモを練りこんでパンを焼きました

▲エッセイ『韓国で農業体験 〜有機農家さんと暮らして〜』公開中

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