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ついにドラマ化確定。辻仁成、コン・ジヨン著『愛のあとにくるもの』

 実は昔から定期的に読み返したくなる本や、見返したくなるドラマや映画があるんですが、その中の1つが1999年に初版が発行された辻仁成・江國香織共著の小説『冷静と情熱のあいだ』です。断捨離ブームに乗っかって一度手放したこともありましたが、やっぱりまた読みたくなり、数年前の一時帰国中に買い求めました。

 今から5年前、まだ息子が生まれて2か月の頃も、映画『冷静と情熱のあいだ』を見返したくなったことがありました。映画を観終わった後、何気なく“冷静と情熱のあいだ”と検索すると…。まさにその日、作家の辻仁成さんが主宰するWEBマガジン「Design Stories」に「冷静と情熱のあいだから20年」という記事が掲載されているではありませんか!あまりの偶然に驚き、その日から私は毎日、辻さんがフランスから発信する日記を読み続けてきました。(当時書き残した記事は下記リンク参照)

 その半年後だったでしょうか。生後8か月になった息子を連れて日本に一時帰国した時、図書館で辻さんのエッセイや小説をいくつか借りました。その時に読んだのが、辻仁成さんと韓国の作家、孔枝泳(コン・ジヨン)さんのコラボ小説『愛のあとにくるもの』でした。その時のことはInstagramに書き残していたので、参考までに載せてみます。

1年ぶりの日本滞在で「図書館最高〜!」と何度も感動している。読みたい本が目白押し。できることなら、図書館丸ごと韓国に連れて帰りたい。

パリのすてきなおじさん』は、表紙のイラストにひかれて借りたけど、よくあるパリジェンヌ関連本などとは全く違う、パリに生きる「街の人」にちゃんと出会える本だった。

パリつながりでもう一つ。今回図書館で見つけて初めて知ったのだが、フランス在住の作家・辻仁成さんが、10年以上も前に韓国の作家・孔枝泳(コン・ジヨン)さんとコラボレーションし、ソウルを舞台にした日韓男女の恋愛小説を書いていた。その名も『愛のあとにくるもの』。

辻さんが男性目線で書いた一冊と、孔さんが女性目線で書いた一冊『愛のあとにくるもの 紅の記憶』があり、どちらも読んでみた。この小説、2005年に韓国のハンギョレ新聞で連載後、韓国、そして日本で出版されたらしい。

辻さんのエッセイ『ECHOES—木霊—』には、この物語が誕生したいきさつが書かれていて、そちらも興味深く読んだ。辻さんと、韓国の詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)との縁についてとか、読んでいて「偶然は必然なんやな」と感じずにはいられないエピソードも。

日韓関係が戦後史上最悪と言われるこの夏、このタイミングで辻さんと孔さんのコラボ小説を知ることができて、本当に良かった。

ふと手にした本を読んで、自分の中にあった点と点がつながっていく、そのワクワク感といったらもう!やっぱり本はおもしろいです。大好きです。

2019年8月6日投稿のInstagramより

 数年前の辻さんの日記に『愛のあとにくるもの』を韓国でドラマ化する話があると書かれており、今か今かと楽しみに待っていたわけですが、ついにドラマ化が確定したようです。男性主人公は坂口健太郎さんが、女性主人公は歴史ドラマ『チャングムの誓い』でチャングムのライバル、クミョンの子役時代を演じたイ・セヨンさんが演じるとのこと。放送は来年以降になるでしょうか?!

 コン・ジヨン作家は映画『トガニ 幼き瞳の告発』の原作者でもあり、私生活では3回の結婚と離婚を経験。父親の異なる2男1女を育ててきた自身をモデルにした小説『楽しい私の家』も書いていて、こちらは蓮池薫さんの翻訳で読むことができます(私はまだ積読中)。2年前には最新エッセイ『それにも関わらず(그럼에도 불구하고)』を出版しており、こちらは図書館で借りて読んでみました。残念ながら日本語訳は出てないようですが、本の内容は翻訳家の戸田郁子さんが、下記のサイトで詳しく紹介されています。

 私は渡韓前まで辻仁成さんの熱心な読者ではありませんでしたが、ある日息子の授乳中に好きだった作品をふと思い出し、タイトルを検索したことで辻さんの日記にたどり着き、彼がフランスから発信し続けている言葉に大いに励まされ、いろんなことを学ばせてもらいながら今日まで暮らしてきました。コン・ジヨンさんの作品を手に取ることになったのも、辻さんの作品を読み返す中で彼女とのコラボ小説があることを知ったからでした。

 ある日ふと頭に浮かんだことを見過ごさず、気になったなら見てみる。調べてみる。確かめてみることで、そこから未知の世界が開き、人生が豊かになっていくことってあると思うのです。ふと思い出したことを無視しない、ということでしょうか。

 私にとって、大学時代に出会った小説『冷静と情熱のあいだ』は、忘れた頃に思い出しては未知の世界にいざなってくれる。まさに、そういう作品なのかもしれません。『愛のあとにくるもの』も、また読み返してみようと思います。ドラマの完成が今からとっても楽しみです。

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