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韓国の嫁・姑・舅事情① ~漫画『ミョヌラギ』より~

 今から数年前、子どもを産んで間もない頃だったでしょうか。『ミョヌラギ(며느라기)』というWEB漫画の存在を知りました。書籍化されたものを読もうと思いながら、機会を逃してはや数年。前回の記事で紹介したソウル国際図書展で『ミョヌラギ』作者のブースを見つけたこときっかけに、やっと手に取り読んでみました。

“ミョヌラギ”とは?
「私がやります」、「私に任せてください」、「私が全部やります!」
思春期、更年期のように嫁になったら経験する“ミョヌラギ(嫁期)”という時期がある。婚家の家族に気に入られ、褒められたいと思う時期。普通は1~2年で終わるが、人によっては10年以上続いたり、終わることがない場合もある。

漫画『며느라기』より

 このタイトルが意味する通り、漫画『ミョヌラギ』では、韓国で嫁(며느리ミョヌリ)という立場になった人の多くが経験する、夫や義実家への違和感やモヤモヤが描かれていました。翻訳本は出版されていませんが、WEB上では日本語翻訳された漫画が公開されています(日本国内限定)。

 2020年には韓国でドラマ化され、シリーズ2まで放送されており、現在日本でもWOWWOWなどで視聴できるようです。

 というわけで、今回の音声配信ではこの漫画をご紹介するとともに、韓国の嫁・姑・舅事情についてお話ししています。ただ、時間が全然足りなくて、話したかったことの半分も紹介できなかったので、シリーズ化(?)してまた配信したいと思っています。

 1つだけ、音声配信の中で「韓国では家族の中で自分がどの立場かによって親族の呼び方が変わり、それがとても複雑で難しい」という話をしたんですが、詳しく説明できなかったので、ここで補足させてもらいますね。

 これは例えば、私が「長男の嫁」か「次男の嫁」かで、夫の兄弟姉妹やその配偶者たちをどう呼ぶか、夫の兄弟姉妹たちにどう呼ばれるか、呼称がガラッと変わってしまうということなんです。過去のブログに詳細を書いていたので、ご興味ある方はぜひ下記の記事をご覧ください。

 韓国人でも親族の呼称は難しいそうですが、家族の序列を重んじる義父母は、結婚1年目で出産目前の外国人嫁に「長男の嫁としての責任感を持つこと」と「親族の呼称を覚えなさい」と説いてきました。

 しかし、「良い嫁になろう」という気持ちは、最初から持ち合わせていなかった私。親族のややこしい呼称については、未だにできないフリをしています。なぜなら私は家族の中では一番年下で、しかも外国人。何年暮らしても知らないことだらけなのに、長男の嫁ぶるなんて無茶ってもんです。無理しても自分の首を絞めるだけですしね。

 少し話はそれてしまいますが、もし私がアジア以外の文化圏から来た人間だったら、親族の呼称を強要したり、「長男の嫁としての責任感を」なんて言わなかったんじゃないかと思うことがあるんですが、どうでしょう?

 日本人と韓国人は同じアジア圏で、外見も似ているからか、言葉を少し交わさないと外国人と思われず、面倒だなと思うことが私はよくあります。今日だって職場で、数か月毎日会っていた小学生に「先生はどうして方言を使うんですか?」と聞かれ、「方言?……あ、私は外国人だからよ」って答えることがありました。彼女はこれまでずっと私のことを日本人だと知らず、方言を使う人なんだと思っていたんですね。

 「外国人扱いされるのが嫌」と言う人もたまにいますが、私は逆です(時と場合にもよりますが)。最初から外国人移民者だと認識してもらえた方が、韓国人ならば当然できること、知っていることを「あなたもできるでしょ?」と期待され、勝手に失望されることもないでしょう。なぜ言葉がちょっと変なのか、知らないことが多いのか、いちいち説明しなくても良いですし。日本人だと知った途端、突然態度を変えてくる子どもにモヤモヤすることも減るかもしれません。

 というわけで、在韓6年目の今は「私は外国人です」って名札を貼って歩けたら楽なのになあ、とさえ思うこともある日々です。(ただ、外国人だからといって最初から無視されたり、説明してもわからないだろうという態度をとられると、ストレスたまっちゃいますよね)

 さて、話を戻しまして。義両親とはつかず離れずで、どちらかと言うと良好な関係を保てている気がしますが、本来長男の嫁に期待される役割を次男の嫁がやっている(やらされている)ように感じることも多く…。『ミョヌラギ』の主人公ほどではないですが、親族の集まりは、やっぱり何だかんだと気を遣ってしまいます。(その気苦労を夫が少しでも理解して、陰でフォローしてくれたら良いんですけどね…)

 それでも、韓国に実家がない私にとっては、夫の家族が唯一の親族。私や夫の亡き後、一人残される息子が寂しい思いをしないよう、親族とは仲良く助け合い、子どもたちの代まで良い関係を築いていきたい。そのために「良い嫁」ではなく、「縁があって家族の一員になった身」として、無理のない範囲で自分にできることをやっていきたいと思う今日この頃です。

▼音声配信はこちら

《番組内容》
韓国で結婚した多くの女性が経験する、夫や義家族に対するモヤモヤや疑問を描いた漫画『ミョヌラギ(嫁期)』。ドラマ化もされたこの作品を元に、外国人嫁の立場から見た韓国の嫁•姑•舅事情についてお話ししています。/2023.06.29収録

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