2023年観劇まとめ~宝塚小劇場公演編~

2023年も終わりが近づいてきたので、今年の観劇記録を残しておきたい。次は、宝塚歌劇のバウホールおよび外部の小劇場公演編。

『夢現(ゆめうつつ)の先に』

公演:宙組
主演:鷹翔 千空
観劇回数:0回

宙組のバウホール公演。101期生のバウホール主演が続く。作・演出の生駒先生は新星で、作品もちょっと尖ったもので興味はあったのだけど、配信も含めて観られず。

※年内にスカイステージの放送があったので観ることができた。
現実と夢という2つの世界。夢の世界はつらい現実の世界の逃避先であり、物語のオチとして夢から現実へというのはよくある構図。
ただ物語の設定や展開の必然性みたいなところの作り込みが甘い。似たような構図でも「アリスの恋人」の方がずっとしっかりした作品だった。

『MAKAZE IZM』

公演:宙組
主演:真風 涼帆
観劇回数:1回

宙組公演。昨年に続き真風さんのリサイタルステージ。過去作品オマージュやJ-POPなど構成は多岐にわたり、トークパートも長めに取っており、真風さんのファンにとっては嬉しい公演だったと思う。

『BONNIE & CLYDE』』

公演:雪組
主演:彩風 咲奈、夢白 あや
観劇回数:1回(配信のみ)

夢白あやのトップ娘役就任後のお披露目公演。御園座公演ということで、配信での視聴となったが、新しい雪組のカラーは十分に感じられる公演であった。夢白あやは、非常に押し出しが強くゴージャスなビジュアル。今の他組のトップ娘役にあまりないカラーで、彩風咲奈との並びもよく「映える」トップコンビになりそうだ。作品も彼らのカラーに合っており、ギャングスターのクライドとその相棒ボニーの映えるシーンが多い。一方で、展開についてはやや勢いまかせの感があり、女優志望なのに何故かアウトローのクライドについていくボニーの心情にはついていけなかったし。周りの人も脱獄や強盗のような犯罪に対する扱いが妙に軽い。人死にも少なくないのに、ジャズ調の軽快な音楽や軽いノリの話し方に違和感を覚えた。

『海辺のストルーエンセ』

公演:雪組
主演:朝美 絢
観劇回数:1回

新進の指田先生の外部劇場公演。冬霞の巴里もそうだったが、世界の構築が非常に上手く、デンマークから連想したという赤と青の対比で描かれる世界が非常に美しい。赤と青は、炎と氷であり、太陽と海であり、人の心の温もりと冷たさでもある。照明や衣装などもこれらの色使いがされており、統一感のある世界になっている。一方で、登場人物の心情の移り変わりなどの描き方はやや不十分で、ストルーエンセが独裁色を強める過程がないため、唐突感を感じるところもあった。

『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』

公演:星組
主演:礼 真琴
観劇回数:1回(配信のみ)

礼 真琴をはじめ、実力派の選抜メンバーを揃えただけあって圧巻のパフォーマンス。礼 真琴はこじらせ男子が、びっくりするほどハマっていた。ヒロインも宝塚では微妙に難しい人妻ヒロインに有沙 瞳がぴったり。色気がすごい。もう一方のヒロイン貴族の令嬢マチルドは、世間知らずで頭でっかちなお嬢様。こちらは、路線ヒロインの詩 ちづるがはつらつと演じていた。傾いた十字架がギロチンの歯になるなど、衣装・演出などではかなりセンスが光る作品だが、主要メンバーの心の移り変わりの描写は明らかに足りない。そのため、話を客観視してしまい、嫁を寝取られたレナール町長と娘を孕まされたラ・モール侯爵の二人が純粋に可哀そうに思ってしまった。

『バレンシアの熱い花』/『パッション・ダムール・アゲイン!』

公演:星組
主演:凪七 瑠海、舞空 瞳
観劇回数:1回

市川市での公演で観劇することができた。お芝居もショーもひたすらに「愛している」公演で、宝塚らしさが詰まっているので全国ツアー公演の演目としてはかなり良かったのではないだろうか。

お芝居のバレンシアの熱い花は、復讐のお話でいかにもな柴田作品。小劇場公演でチーム分けした上で役が結構多いので、多くの人の活躍が見られてよかった。全体的には、月組の応天の門を観た直後だったのもあり、お芝居が全体的に大げさに感じたが、そんな中でも凪七 瑠海や舞空 瞳はレベルが高い。お話は、現代にはあまりそぐわない男に都合のいいストーリーだと感じたが、まあ古典として許される範囲かな。

ショーの方は、凪七 瑠海の出番をかなり抑えて星組生に活躍の場をかなり与えていて、これは良かったと思う。瀬央 ゆりあ、極美 慎、天飛 華音あたりは、かなり出番が場面を貰っていた。個人的には102期コンビのデュエットダンスが見られたのが嬉しかった。衣装のセンスも全体的に良かった。

『Stella Voice』

公演:星組
主な出演者:天華 えま 
観劇回数:1回(配信のみ)

若手の活躍の場として非常に良い公演だったのではないか。下級生にいたるまで、一人ひとりに活躍の場が与えられ、真ん中の天華 えまがしっかりと場をまとめていた。一人ひとりが自分のソロ場面を与えられる試みは他の組から見ても羨ましいんじゃないかな。

『二人だけの戦場』

公演:花組
主演:柚香 光、星風 まどか
観劇回数:2回(うち配信1回)

正塚作品はエンタメ性が薄くて苦手に感じることが多いのだけど、この作品は良かった。ユーゴスラビアをモチーフにしているのだと思うが、脚本がしっかりしており、綺麗ごとで終わらないお話がしっかりと描けている。柚香 光と永久輝せあに白い軍服が良く似合う。

『舞姫』

公演:花組
主演:聖乃 あすか
観劇回数:0回

花組のバウホール公演。聖乃 あすかは2回目のバウホール主演。舞姫の主人公は結構ひどい奴で、どんなふうに宝塚ナイズされているか気になっていたのだけど、残念ながら配信も含めて観られず。

※年内にスカイステージの放送があり観ることができた。
やはり留学先で孕ませた女を見捨てて国に帰るというのは、フォローのしようがないなと感じた。

『Death Takes a Holiday』

公演:月組
主演:月城 かなと、海乃 美月
観劇回数:2回

芸達者な月組で海外ミュージカル、しかも月城かなとにぴったりなイケメン死神役ということで楽しみにしていたのだが、期待通りの作品だった。コメディ調で笑える場面も多い一方で、テーマはしっかりしているので考えさせる作品でもある。アウトプットしたくなる作品だったので別記事で感想・考察も書いた。

『月の燈影(ほかげ)』

公演:月組
主演:礼華 はる
観劇回数:1回(配信のみ)

月組の期待の若手スター礼華 はるのバウ初主演作品。江戸の裏社会での抗争のお話で礼華 はるはダークヒーローが合っていると感じた。W主演という位置づけにはなっていないものの102期彩海 せらも大活躍でステップアップの準備はもう万端だ。天紫 珠李も今までの役の中で一番と言っていいほど良かった。

『Xcalibur エクスカリバー』

公演:宙組
主演:芹香 斗亜、春乃 さくら
観劇回数:1回

https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/xcalibur/index.html

アーサー王伝説をベースにしたミュージカル作品。宙組の新トップコンビのプレお披露目公演でもある。演出やストーリー展開がアニメ・ゲームなどで馴染みのある王道ファンタジー風で、いつもの宝塚とは違ったテイストで楽しめた。貧しい身分の若者が実は王子とか、伝説の剣を抜いて王になるとか、父親を殺されて闇落ちとか、ドラゴンVSウルフとか、ピンチに別れた仲間が駆け付けるとか、今時見ないほどに王道展開の目白押し。複数のストーリーラインが同時並行で展開されるため、ややもたつきを感じるところもあったが総合的な満足度は高かった。

『大逆転裁判』

公演:宙組
主演:瑠風 輝
観劇回数:1回

https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/daigyakutensaiban/index.html

人気ゲームが原作。エクスカリバーもゲームっぽい展開だし、来年はFF16ということで、宙組はそういう路線を押すのだろうか?本作については、かなり原作再現に力を入れていて、それはかなり成功していると感じた。原作の極端とも言えるような個性を持ったキャラクターは、生身の人間が演じるとやや滑稽ではあるが、ギリギリのラインで楽しめるところに収まっている。捜査パートと裁判パートの構成もゲームそのままで、テンポ良く話が進むのも好印象。事件の真相はゲーム以上に稚拙ではあるが、ゲームの方もそれほど高度な内容ではないので不満はない。

『愛するには短すぎる』/『ジュエル・ド・パリ!!』

公演:雪組
主演:彩風 咲奈、夢白 あや
観劇回数:1回

地方公演で前方席で観劇。両作品ともに、今の雪組トップコンビにぴったりだった。

お芝居の方は古い作品で、緊急避難訓練の場面とか、明らかに踊る場面を追加したいだけという感じで全体としてはどうかと思うところも少なからずあるのだけど、会話劇では彩風・朝美のテンポの良い芝居がハマっており、夕日をバックに彩風・夢白がならぶ場面はこれ以上ないほどに絵になっていた。

ショー作品は大劇場作品の再演だけど、全国ツアー向けの派手でハッピーな作品だと思う。彩風・朝美はカッコ良く、夢白あや、音彩らはディズニーのマスコットキャラクターのような愛らしさがある。個人的に驚いたのは、諏訪さきが男役として一皮むけたかのように、渋い魅力を放っていたこと。そういう成長を見られるのも小劇場公演の魅力だろう。

『双曲線上のカルテ』

公演:雪組
主演:和希 そら
観劇回数:0回

残念ながら観劇機会なし。

『ME AND MY GIRL』

公演:星組
主演:水美 舞斗(専科)/暁 千星、舞空 瞳
観劇回数:2回

幸運なことに、博多座で水美、暁の両方が主役のバージョンを観劇することができた。事前に想像していた以上に二人の演じるビルが違っていて、2回目も新鮮に楽しめた。水美ビルは、周りを巻き込む攻めたアドリブ芝居で生物としての舞台の魅力を引き出し、暁ビルはアドリブは控えめながら月組仕込みの役の作り込みで下町育ちから貴族社会への適応を演じていたように思う。ただ、本作のMVPはサリーを演じる舞空瞳だろう。下町育ちでやんちゃで品のないところを魅力的に演じ、ビルのために身を引こうとするけなげな想いを歌に込めて観客に訴えかける。何度も再演されている本作でも屈指のサリーになったと思う。

『My Last Joke-虚構に生きる-』

公演:星組
主演:天飛 華音
観劇回数:0回

残念ながら観劇機会なし。

『BE SHINING!!』

公演:花組
主演:柚香 光
観劇回数:1回

柚香光のコンサートということで歌唱面では不安があったが、彼女らしい躍動感のある場面が多くファンにはかなり満足度の高い公演だったのではないだろうか。

『激情』/『GRAND MIRAGE!』

公演:花組
主演:永久輝 せあ
観劇回数:1回

星組全ツに続いて柴田作品+ロマンチックレビューというクラシカルな組み合わせ。

お芝居の激情は、いかにもな柴田作品。真面目な軍人が女に入れあげて身を滅ぼし、女の心も離れていくという破滅の過程が描かれる。永久輝せあは闇落ちするホセに良くあっているし、星空美咲は花總まり・夢咲ねね・愛希れいかとそうそうたる娘役トップが演じてきたカルメンを立派に演じていた(やはりファム・ファタールを演じるにはやや経験が足りないのは否めないが)。個人的に気になったのは終わり方で、死後にカルメンと再会する救いがある終わり方よりも、アルジェの男のような悲劇的な終わり方で良かった気がする。

ショーの方は、モダンな場面が削られて、クラシカルなシーンが増えた結果、ロマンチックレビュー感が本公演バージョンよりアップしていたように思う。シボネーの躍動は変わらずに素晴らしいが、全編通して味わいがあまり変わらないので、やや冗漫に感じるところがあった。それにしても星空美咲は、星風まどかの場面を誰かと分け合うでもなくほぼそのまま演じており、芝居も含めて負担は大きかっただろうな。

個人的ランキング

最後に2023年の小劇場作品の個人的ランキング。

1位:Death Takes a Holiday

エンタメよりもテーマの比重が高い海外ミュージカル作品という感じで、やや好みは分かれると思うけれど、死との対比という形で描かれる人生賛歌は個人的には好みだった。

2位:Stella Voice

バウ公演は若手の成長のための場という意味あいが強いと思うが、それにしても参加者全員に自分の好きな曲のソロというこの作品は、かなり思い切った取組。天華えまが、その真ん中にいるというバランスもよかった。

3位:ME AND MY GIRL

作品のストーリー的には休憩挟んで2時間半かけてやるようなお話ではないと思っているのだけれど、実際観てみると楽しめる。ビルの役替りでだいぶテイストが変わること、そのどちらが相手でも舞空瞳が魅力的なサリーを演じたことが大きかった。


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