2023年観劇まとめ~宝塚本公演編~

2023年も終わりが近づいてきたので、今年も観劇記録を残しておきたい。まずは、メインフィールドの宝塚歌劇の本公演から。関東在住ということで、東京宝塚劇場で今年上演された作品をまとめておく。宝塚歌劇公式チャンネルの各作品の初日舞台映像リンクをつけるので、興味のある方はぜひ見てみて欲しい。

『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』/『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』

公演:星組
主演:礼 真琴、舞空 瞳
観劇回数:3回

お芝居の方は、ジョージアを舞台とした小説「斜陽の国のルスダン」を舞台化したもの。トップスター礼 真琴を筆頭に踊れるメンバーが多い星組による戦の場面のジョージアンダンスの場面は非常に見応えがある。お話は、他国の侵略により亡国の危機にあるジョージアの女王ルスダンとそれを支える王配ディミトリの愛が描かれる。斜陽の国の物語ということで、悲しい結末を迎えるが、宝塚にぴったりの美しい愛の物語だ。

ショーは、うってかわってド派手な電飾とロック調の楽曲で展開される。一応、物語仕立てのショーということなのだけれど、お話にはさっぱりついていけなかった。場面と場面の切れ目の余韻のようなものが、ものすごく少なく、最初に見たときはもう少し余韻が欲しいと思ったが、後半で多少演出に調整が加えられたっぽいのと、慣れてきてだいぶ楽しめるようになった。

『うたかたの恋』/『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』

公演:花組
主演:柚香 光、星風 まどか
観劇回数:5回(うち1回は配信)

お芝居のうたかたの恋は、これまでに何度も再演されてきた作品。ミュージカルの名作「エリザベート」にも登場するルドルフが主役。物語の構成として冒頭にクライマックスを持ってきて、遡る形でそこに至る過程が描かれるのであるが、クライマックスの場面に戻るまでの過程はやや退屈で、1時間半は冗長な印象であった。ヒロインのマリーは世間知らずの生娘といった役どころであるが、トップ娘役として経験を積んだ星風まどかにはやや幼すぎる役と感じた。幼さを出すためか、裏声のような発声の仕方もあまり好きではなかった。一方、クライマックスの舞踏会の場面あたりからの盛り上がりや、ラストのマイヤーリンクの雪の中でのデュエットダンスは美しく、後半は見所が多い。

ショーのENCHANTEMENTは、ジャガービートがやや尖った作品だったのに対し、王道の宝塚ショー作品となっている。柚香 光を中心とした男役群舞の場面が多く、長身でダイナミックなダンスは迫力がある。水美の専科異動の人事がオープンになったことで、今後永久輝せあが花組で序列を上げることが確実なので、今回作品において柚香と水美の並びの場面が多いことが正当化されて、どちらのファンも安心して楽しめる状況であったのも良かった。クラシックアレンジなど楽曲も好みのものが多く、特に「the water is wide」はとても好きな民謡なので、アレンジ楽曲を使った場面があったのは嬉しかった。

『応天の門』/『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』

公演:月組
主演:月城 かなと、海乃 美月
観劇回数:6回(うち1回配信)

お芝居は漫画原作だが、世界観の作り込みは見事。登場人物がかなり多く、日本史の人物なので名前も似たようなものが多く、初見だと誰が誰かわかりにくいのは難点か。退団者が多い作品となったが、腹黒貴族を演じた組長の光月 るう、幼帝を見事に演じた千海 華蘭、出番は少ないながら目を奪われる美しい踊りを披露した結愛 かれんなど、みな持ち味を活かし、役を深めて最後まで作品と向かい合うのが月組らしい。

ショーは、華やかなラテンショー。最近の月組のショーは、キラキラよりもシックな大人の魅力を売りにしたものが多かったが、本作はキラキラ全開で、新鮮でとても魅力的だった。暁千星が抜けてショースター不足が言われるが、個人的には今の月組メンバーでも十分に魅力的なショーは作れると感じた。月担の贔屓目はかなりあるとは思うが。

『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』

公演:宙組
主演:真風 涼帆、潤 花
観劇回数:2回(うち1回配信)

あまりにも有名なスパイ、007/ジェームズボンドが宝塚作品に。演じるのはスーツの似合う男役トップスターと言えばこの人真風 涼帆ということで期待値はどうしても高かったのだけれど、うーんこれはイマイチだった。ある程度意図的であることは理解できるのだけれど、カッコイイスパイものとして描きたいのか、ハチャメチャコメディとして描きたいのかが、中途半端でどちら目線でもあまり楽しめなかった。

『ライラックの夢路』/『ジュエル・ド・パリ!!』

公演:雪組
主演:彩風 咲奈、夢白 あや
観劇回数:2回(うち回配信)

お芝居は、振付師の謝先生の作品だけあって、冒頭から魅せるダンスシーンが多い。作・演出・振付を同じ人が担当することのメリットもあるとは思うのだけど、やはり脚本などは行き届いていないと感じる。鉄道・関税同盟・株式会社など色々な要素が盛り込まれているものの、掘り下げは全くなく表面的な取り扱いに留まる。何か問題が起きては、都合よく解決するの繰り返しで、また場面ごとのつながりも唐突感がある。脚本の難しさを感じる一作だった。

ショー作品は、今の雪組にぴったりの華やかな作品。ここ最近の藤井先生の作品の中でもかなりの当たり作品だろう。特に、新トップ娘役の夢白あやは活躍する場面が多く、どの場面も彼女の魅力が引き出されている。華やかな衣装が良く似合い、真ん中が映える。今のトップ娘役の同じタイプの人がいないと思うので、今後が楽しみになった。

『1789 -バスティーユの恋人たち-』

公演:星組
主演:礼 真琴、舞空 瞳
観劇回数:回(うち回配信)

ファンも、劇団も組子もみんなが待ち望んでいたであろう作品。コロナの影響で出鼻をくじかれる形となってしまったが、力強く民衆が立ち上がる作品とエネルギーに満ち溢れた星組の相性はぴったりで、テンションが上がる。脚本はよく見ると突っ込みどころがあるものの、カッコイイ楽曲と力強いパフォーマンスに終始圧倒される。公演日数は減ってしまったが上演できて良かった。

『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』/『GRAND MIRAGE!』

公演:花組
主演:柚香 光、星風 まどか
観劇回数:3回(うち1回配信)

お芝居は、古い映画が原作のコメディ作品。重厚さとかテーマ性とかはほとんどないが、単純に楽しめる作品としての質は高い。原作映画もチェックしたが、原作のクォリティがそもそも高く、それを上手く舞台作品におとしているという印象。キャラクターの個性が際立っており、役者さんもその個性をきちんと表現し、さらに公演期間の後半にいくほど芝居を深めていくのは流石だった。

ショー作品は、岡田先生の作品ということで、クラシカルで綺麗な作品。シボレーの場面は、力強く躍動する動きが良かった。柚香 光のショー作品も増えてきたけども、彼女の魅力を引き出そうとすると似た方向に行くのか、作品ごとの違いが印象としてあまり残っていないのが不思議だ。

『フリューゲル -君がくれた翼-』/『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』

公演:月組
主演:月城 かなと、海乃 美月   
観劇回数:6回(うち2回配信)

お芝居は、斎藤先生のオリジナル作品。東西ドイツの分断と統一を背景にした作品だが、コミカルな場面も多く肩の力を抜いて楽しむことができる。似たようなテーマや見せ方の作品は少なくなく、オリジナリティ溢れる作品とはお世辞にも言えないのだけど、1時間半の尺でまとまりもよく満足度が高い佳作。

ショー作品は、栗田先生の初レビュー作品。宝塚のレニュー作品では、フランスやイタリアをテーマにした作品は多いが、本作は東京をテーマにしており、江戸時代から現代までの時代の移り変わりをアンソロジーで描いている。お芝居的要素が月組に合った作品であると同時に、個々の場面のこだわりや作り込みが半端ではなく、何度も通って舞台上の細かいところまで見たくなる作品だった。テーマ曲も耳に残るいい曲で、言葉の使い方のセンスも独特。自分の感性に刺さるすごく好きな作品になった。

個人的ランキング

最後に2023年度宝塚本公演の個人的ランキング。

芝居1位:1789 -バスティーユの恋人たち-

輸入元作品が素晴らしいうえに、日本版を演じる星組の布陣が盤石ということで約束された成功と言っても良かっただろう。一方で、公演中に休演・代役公演などが何度もあり、演者がベストコンディションでないことが伺える公演が多かったのも事実。今の公演スケジュールで大作を演じることの負担がいかに大きいかという現実を浮き彫りにする作品でもあった。持続可能な形で質の高い公演を続けるために、宝塚がどうしていくべきなのか、それをしっかりと考えて欲しい。

芝居2位:フリューゲル -君がくれた翼ー

オリジナル作品でちゃんと楽しめる作品が出る。当たり前のことなんだけど、そうでない作品も多く、そんな中で本作は良かった。東西ドイツやナチス収容所の重いテーマにコミカルで笑えるシーンが散りばめられており見やすい。またクライマックスのベルリンの壁崩壊と第九の合唱はインパクトがある見せ場として良かった。

芝居3位:ディミトリ~曙光に散る、紫の花~

原作のシナリオがしっかりしているのと、見せ方が上手いというのでいい作品になったと思う。紫を基調とした世界の作り方が綺麗だったし、ジョージアの文化や衣装なども作品を魅力的にするために効果的だったと思う。

ショー1位:万華鏡百景色

マンネリズムと紙一重の王道ショー作品が多い中で、新しい取り組みを取り入れていくことは本当に貴重。この作品は新しい取り組みに挑戦し、成功した作品だと思う。東京という身近ながら新しいテーマを取り入れ、時間軸で場面を構成するというのは新しく、そして魅力的だった。印象に残っているのはカフェブレイクの番組、出演しているジェンヌさんたちがこの作品について話している様子。栗田先生の作り出そうとする世界感に感心し、ワクワクしているのが伝わってきた。それっていい作品を作るうえで結構大事なことなんじゃないかと思う。

ショー2位:Deep Sea -海神たちのカルナバル-

華やかで熱いラテンショー。他の組に比べてショースターが足りないとか地味と言われることの多い月組でこういうショー作品をやってくれたことが嬉しかった。普段宝塚を観ない人が多い貸し切り公演の日に、チョンパで場面が明るくなった瞬間に、あまりの鮮やかさにどよめきが起きた。それくらい華やかでインパクトのある作品だったと思う。

ショー3位:ジュエル・ド・パリ!!

華やかさという意味ではこの作品も負けていない。夢白あやがトップ娘役になったことで、雪組ショー作品の華やかさがグッと増したと思う。今後の活躍も楽しみだ。

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