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『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』斉藤倫

原稿やラフの提出、個展の準備など、慌ただしくなって、心がざわざわしてきた。わたしはこの「ざわざわ」が好きだ。不安や焦りもあるが、武者震いに近い気がする。これから頭の中にある完成された絵をこの手で表現していく。現実にはどんな絵になるだろう。わくわくする。

原画制作に入る時、わたしは孤独になる。そして少しさみしい気持ちになるし、いつもの自分じゃない気がする。(むしろこちらの方が自分なのかも?)でもわたしはこの「孤独」がとても大切で、いつでもポケットに入れておきたいと思う。

今日は『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』を読んだ。ずっと読もうと思っていて買っていなかったが、ある時素敵な本屋さんでこの本の背表紙と目が合ったので、今だ!と思って買った。
ぼくときみが何編かの詩を読みながら、ことばや詩から心や記憶に触れていく。きみはなかなかことばにできないけれど、ことばにしていくごとに少しづつ大人に近づいて。ぼくはさみしさと懐かしさを感じながら見守っている。

詩を読むことはことばの隙間を拾って噛み締めたり、少し距離を置いて眺めてみたりして、じんわり感じることだ。眺めてみてもよくわからない詩もあるかもしれない。そういう時、まだわたしは真の大人になる伸び代があるんだなと感じるのだ。

装丁もとても素敵。カバーを取ると、仮フランス装?のような形で美しい。眺めていたくなる。高野文子さんの挿絵も落ち着く可愛らしさ。『るきさん』や『ドミトリーともきんす』が大好きなので斉藤倫さんとのタッグはとても嬉しい。

このお話では死についても書かれている。大人になるということは同時に死に近づくこと。そして、人はいつか死ぬのだ。わたしが大切に思っている人もみんな死ぬ。でも「孤独」のように「死」もちゃんと、ポケットに大切にいれておかなければならない。いつ死んでも悔いのないように楽しく美しく生きたい。

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