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投票行って外食しようよ。

独身時代は断然期日前投票派だったのだけれど、結婚してから選挙当日に投票に行くことが増えた。
別に、何らかの強いこだわりがあるわけではなく、単純に今の家からは当日の投票所の方が近いというだけの理由である。

特別な用事がなければ、夫と一緒に連れ立って投票所に行く。
息子が生まれてからは、ベビーカーをガラガラと押しながらの投票だ。

毎回毎回、無意識のうちに頭の中では同じ曲が流れる。

選挙~の日って~♪ うち~じゃ~な~ぜか~♪

モーニング娘。『ザ☆ピ~ス!』(つんく♂)である。
何なら家に帰ってからもずっと歌う。

選挙の日って ウチじゃなぜか
投票行って 外食するんだ
(奇跡見たい すてきな未来
意外なくらい すごい恋愛)

いい歌詞だな!!

大人になって思ったけど、ここほんとにいいフレーズだな!!

***

だいたいどこもそうだと思うけれど、私が住んでいる地区の投票所は、その学区域内にある小学校だ。私の母校でもある。
子どもの頃、選挙の日にはいつも、両親に連れられて小学校にやってきていた。

毎日通っている「私たちの小学校」が、その日は大人に囲まれて、厳かな雰囲気を放っている。
人は多いのに、空気はしんとして重苦しい。
「外で待っててね」
と言われ、弟と校庭に行こうとするけれど、当時は立ち入り禁止にされていて、仕方なく入り口近くにある池やウサギ小屋を覗いて時間をつぶした。

大人だけが入れるあの場所に入ってみたいなあ。
大人になるのはずいぶん先のことだなあ。

そんなことをぼんやり考えながら、お待たせと出てきた両親に駆け寄る。
「ねーねー、だれに入れたの?」
と尋ねると、父親は渋い顔で
「そういうのは家族でも言っちゃいけないの」
とたしなめ、母親はあっけらかんとしながら
「え、ママは言ってもいいよ。ママはね~」
と投票した党の名前を教えてくれた。

どうせここまで出てきたのだから「お茶でもして帰ろうか」もしくは「ごはんに行って帰ろうか」と父親が言い、母親がうきうきし始める。
出不精の私はちょっとめんどくさいと思いながらも、両親の満足気な空気がうれしいので、弟と一緒におとなしくついていく。

その日の夜は、ニュースを見る。
「ねえねえ、入れた人、当選した?」と聞いても、父親はやっぱり教えてくれなくて、母親は「あーあ」とか「あ、よかった」とかわかりやすくつぶやいていた。

***

なんてことのない記憶だが、思い返すと平和で幸せな思い出であることにびっくりする。つんく♂氏にも、そういう思い出があったんだろうか。

そう、選挙の日って、家族イベントなのだ。

おかげで私は、今でも体育館に入れることがほんのりとうれしくて、毎回忘れず選挙に足を運んでいる。

今でも投票所を見渡すと、家族連れ、子連れで選挙に来ている人がたくさんいる。
この子たちに選挙権はないけれど、一回一回の選挙の日の幸せな記憶が、やがて彼らを当たり前のように投票所へ向かう大人に成長させるかもしれない。
そして、今はまだ物心のつかない小さな息子。
彼もいつかは、こんな風に私たち両親に連れられて投票所に来たことを思い出し、選挙に行こうかなという気持ちになってくれるかもしれない。

小さな「ピ~ス」が積み重なって、未来の大きな「ピ~ス」になる……!
『ザ☆ピ~ス!』というタイトルに、深イイレバーを押し込みたい……!

英会話スクール入ったけど行けてない。
デリバリーピザをMにするかLにするか悩む。
盛り上がった長電話が切りにくい。
好きな人が優しかった。
大事な人がわかってくれた。
(すべて歌詞より)

なんて、圧倒的な平和。

裏を返せば、平和でなければ気にしてなんかいられない、悩みようもない事柄ばかり。

なんてことのないことで悩み続ける、そんな平和な未来を望むのならば、できることはただ一つしかない。

これからもずっと、投票行って、外食しよう。

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