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一人称が言えない病

保育園のころから今に至るまで、自分を指す一人称で悩み続けている。
基本的に「ボク」が一番しっくりくるのだが、保育園時代はともかく、小学校に上がると、周囲の目(耳)が気になって言えなくなった。

英語だと「I(あい)」で済むと知ったときは、どんなに英語圏に生まれたかったかと思った。もちろん、女性という状態であるならば。男に生まれていれば、日本に生まれたって別に何の問題もなかった。

英語を習った後も日本語は好きだけれど、一人称が性別によって違ってくるのはけっこう深刻な問題だった。

それで、自分のことを呼べなくなった。動詞が続く文章なら、日本語だと省略可能だし、なんとかごまかせる。だけど、一人称がどうしても必要なことが、言えない。

「コレ誰の」と言われて困惑する。自己紹介しろと言われて困る。

小学校にあがって、同じ苗字の子がいた。同じ苗字だと言いたかった。だけど、「(あなたは)苗字○○っていうんだよね?」の後で言葉に詰まった。それで、
「同じだね」
と言った。苦し紛れだった。相手はきょとんとしていた。今でも覚えてる。「ボクも同じ苗字なんだよ」と言いたかった。言えなかった。

中学くらいから、一人称をなんとか「わたし」と言えるようになっていった。出来る限り使わないけれど、それでも大人は男性でも「わたし」で通るのだから、それでいいと割り切ることにした。

それでも、言いづらいことは言いづらくて、言うとどうも不自然な雰囲気みたいで、指摘されたことがある。高校のころ、「"わたし"って・・・(笑)」と含み笑いをされたことがあった。なんだか、ものすごく傷ついた。別に相手が悪いわけじゃなくて、自分でもどうして「わたし」に縛られてしまうのか、自分が嫌だった。

それで、なんとなく中島みゆきが言いそうな感じで、「おいら」を使ってみることにした。まぁそれなら女でもなんとかなるかなと思った。アルバイトや仕事の時は、「自分は」も使った。「わたし」は最小限にするように、無意識でそうしていたように思う。

正直、今も自分のことを何と言えばいいのか悩んでいる。

だから、この文章にも、一人称はほとんど出てこないはずだ。日本語は、省略できて、便利だ。

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